はしかの特徴と感染経路
静岡県内ではしかの患者が急増していることを受け、浜松医療センターの感染症管理特別顧問で浜松市感染症対策調整監の矢野邦夫医師が、はしかの特徴や重症化リスク、予防策について詳しく解説した。
はしかは麻疹ウイルスが原因で発症する感染症で、その感染力は非常に強く、インフルエンザの約10倍にも及ぶ。くしゃみやせきなどの飛沫だけでなく、同じ空間にいるだけで空気を介して感染が広がるため、極めて注意が必要だ。
感染後、8~10日(最大21日)の潜伏期間を経て、発熱やせき、鼻水、目の充血といった症状が現れる。この時期は「カタル期」と呼ばれ、一般的な風邪と見分けがつきにくい。しかし、この時期が最も危険で、すでに感染力があり、周囲にうつしてしまう可能性が高い。
その後、耳の後ろやあご、おでこなどに赤い発疹が現れる「発疹期」に移行する。発疹は次第に腕や足など体の上部から下部へと広がっていくのが特徴だ。そして、熱が下がり発疹も消えていく「回復期」を迎える。一度はしかにかかると免疫が獲得され、一生感染しないとされる。
重症化しやすい人とリスク
予防接種を一度も受けていない人、特に乳幼児や糖尿病、がんの患者、免疫不全で薬を服用している人は重症化リスクが高い。未接種の子どもが感染した場合、約5人に1人が入院し、千人に3人が脳炎や重い肺炎で死亡する。決して少なくない子どもたちが命の危険にさらされることになる。
さらに、感染から数年後に、潜伏していたウイルスが脳細胞を破壊する難病「亜急性硬化性全脳炎(SSPE)」を発症するケースもある。これは数万人に1人の割合で発生し、特に2歳未満で感染した場合にリスクが高まる。発症するとほとんど寝たきり状態となり、治療法は確立されていない。
妊娠中の女性がはしかに感染すると、早産や流産の恐れがある。妊婦はワクチン接種ができないため、同居家族など周囲の人が予防策を徹底することが重要だ。
予防接種の有効性と現状
はしかの予防接種は1回で95%、2回でほぼ100%の人に免疫がつく。日本では1978年に予防接種が開始され、2006年から2回接種が標準となった。そのため、ワクチンを接種していない50代以上の人や、1回のみの接種だった30代後半から40代の人では、免疫が不十分なケースが多いと考えられる。
2回接種してもまれに感染することはあるが、軽症で済み、周囲への感染性も低い。国は予防接種を推奨しており、95%以上の人が接種すると「免疫の壁」が形成され、感染拡大を防ぐ効果が期待できる。
今年の患者増加の背景
日本は2015年に、世界保健機関(WHO)からはしかの「排除状態」と認定された。しかし、イエメンやインドネシアなど海外では患者が多く報告されており、そうした国への渡航や外国人観光客の来訪により、国内でも患者が発生している。
予防接種は接種後2週間で効果が現れる。これから仕事や長期休暇で海外に行く予定のある人で、はしかにかかったことがなく、ワクチンを接種していない人は、積極的に接種を検討すべきだと矢野医師は呼びかけている。



