群馬県南牧村で、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器から一定期間離れ、自然の中で心身を休める「デジタルデトックス」の体験プログラムが開かれた。参加者からは「スマホに日々の時間を奪われていたことに気付いた」などの声が上がり、デジタル機器との向き合い方を見直す機会となった。
プログラムの概要
一般社団法人「南牧村長寿計画協会」が主催し、5月20~22日の2泊3日で実施。群馬や東京に住む40~50代の男女8人が参加し、なんもく村自然公園に宿泊した。参加者はスマートフォンを封筒に入れて封印した後、講演や座禅、こんにゃく作り、弦楽三重奏の演奏鑑賞などを体験した。
参加者の気づき
終了後、指導した東貴大医師(36)=東京ハブクリニック副院長=と振り返りの時間を持った。参加者は「普段、検索やSNSを無意識に見て時間を浪費していた」「時計やライト代わりにも使っていた」など、スマホが日常生活の身近な存在になっていたことに改めて気付き、スマホを強制的に断つことで「自分の時間を取り戻せた気がした」「音楽や景色に没入できた」「今後の人生を内省する時間になった」と前向きに受け止めていた。
一方で、「プログラムに一貫したストーリーがあれば、なお良かった」「食事はもっと簡素でよい」「(スマホがないため)夜間用の懐中電灯が必要だった」と改善点を指摘する声もあった。
スマホとの“再会”
この後、参加者は封筒の封印を解いてスマホと“再会”。東京で税理士として働く太田亮平さん(45)は、着信2件、メール約150件、LINEのメッセージ約50件、仕事用チャット2件が届いていたといい、「スマホがどれだけ時間を奪っていたのか実感した。今後は就寝前にはスマホの電源を切る習慣を付けたい。仕事に支障が出ない範囲で、オンとオフを切り替えたい」と話した。
東医師は「現代人がスマホにいかに振り回されている生活を送っているか、分かってもらえたのではないか。デジタル社会で受動的になりがちな中、考える力や感動する力を養ってもらいたい」と語った。
今後の展開
企画運営に携わった広告代理店の電通は、今秋にも一般参加者向けのプログラムを実施する方針。今回寄せられた意見を踏まえて内容を改善し、将来的には回数を増やしていきたいとしている。
主催団体代表理事の鴨下一郎さんに聞く
南牧村長寿計画協会の代表理事で、日本心療内科学会顧問の鴨下一郎さん(77)にプログラムの意義などを聞いた。
―デジタルデトックスを企画した狙いは。「今は24時間、誰かとつながっている時代だ。孤独ではなくなる一方、常に連絡が来る煩わしさもある。孤独と煩わしさのバランスをどう取るかを考えるためにも、年に一度でも『つながらない時間』を持つことは重要だと思っている」
―実際に参加して感じたことは。「私自身、スマホに縛られている感覚はあまりないが、自然の中で過ごし、物理的に連絡が入りにくい環境に身を置くと、普段とは違う形で物事を考えられる。1、2日でも連絡を絶つことで、ふとわれに返る感覚がある。参加者にもそうした時間になったと思う」
―現代人にとって、デジタル機器との距離感は。「夜寝るまでスマホを見続け、寝落ちするような生活をしている人も少なくない。便利な道具だからこそ、どう付き合うかを見直す必要がある。メンタルヘルスの面でも重要だ」
―なぜ開催地に南牧村を選んだのか。「高齢化率日本一の村であり、豊かな自然が残る地域だからだ。高齢者が穏やかに暮らしていて、人情も温かい。都市部でデジタルに追われて疲れている人にとって、そこに身を置くだけで癒やされる場所だと思う」
―地元の高齢者も企画に参加した。「こんにゃく作りなどで地元のお年寄りに講師役を務めてもらった。参加者だけでなく、受け入れる側の高齢者にとっても生きがいや役割につながる。長寿計画協会は、高齢者の就業機会や生きがいづくりを目的に活動しており、そこも大切にしている」
―今後の展開は。「南牧村で実績を重ねながら、企業の福利厚生にも広げたい。デジタル疲れを抱える社員のメンタルヘルス対策として活用できると思う。将来的には、子ども向けのプログラムもできればと考えている」



