羽田空港事故で拡声器の避難指示が「聴取不可能」と判明 再現実験で明らかに
2024年1月に羽田空港で発生した日本航空機と海上保安庁航空機の衝突事故において、国の運輸安全委員会は2026年4月17日、避難指示の聞こえ方を検証する再現実験の分析結果を公表しました。拡声器を使用した指示について「伝達範囲が不十分」と指摘し、安全対策の見直しを求める内容となっています。
事故発生時の避難指示伝達に課題
事故は2024年1月2日午後5時47分に発生。日本航空機の乗客・乗員379人は脱出シューターを使用して避難し、全員無事でした。しかし、機内放送が使用不可能な状況の中、客室乗務員が拡声器や肉声で避難指示を出したものの、一部の乗客に正確な指示が伝わらなかったことが判明しています。
運輸安全委員会は2025年5月、羽田空港において事故機と同型の日本航空機(エアバスA350)を使用し、客室乗務員による避難指示の聞こえ方を確認する再現実験を実施しました。機内6カ所に集音マイクを設置し、左右8カ所の脱出口に客室乗務員を配置。日本航空の客室乗務員が機内前方から肉声や拡声器を使用して避難指示を行い、音量を詳細に計測しました。
再現実験で明らかになった「聴取不可能」エリア
実験では、事故時の状況に可能な限り近づけるため、右エンジンのみを稼働させ、当時乗客が撮影した機内の動画音声を機内放送で流すなどの工夫がなされました。その結果、前方の左右4カ所の脱出口に配置された客室乗務員の避難指示は「聴取可能」と評価されましたが、中間の左右2カ所では「困難」、最後部では「聴取不可能」という深刻な状況が明らかになりました。
運輸安全委員会の分析によれば、拡声器を使用した場合でも、機体後方への音声伝達が十分でないことが判明。特に騒音環境下では、避難指示が明確に聞き取れないエリアが存在することが実証されました。
国土交通省が航空各社に安全対策を要請
運輸安全委員会の分析結果を受けて、国土交通省航空局は同日、航空各社に対して具体的な安全対策の実施を要請しました。主な内容としては、より高出力の拡声器の搭載に努めること、機内放送が使用できない状況における客室乗務員同士の意思疎通や乗客への呼びかけに関する訓練の強化が挙げられています。
さらに注目すべき点として、航空会社が航空機メーカーから航空機を購入する際、拡声器が1種類しか選択できない場合がある現状を指摘。国土交通省はメーカーに対しても「選択可能な拡声器のオプションを変更」するよう要請し、より多様な安全装備の選択肢を確保する必要性を強調しました。
今後の対応と追加実験の計画
運輸安全委員会は、今回の実験結果を踏まえ、別の型式の拡声器を使用した追加実験を計画していると伝えられています。航空機内における緊急時の音声伝達方法の改善に向け、より詳細なデータ収集と分析が進められる見込みです。
この事故を契機に、航空業界全体で緊急時の避難指示伝達システムの見直しが加速。乗客の安全確保に向けた技術的・訓練的な対策の強化が急務となっています。国土交通省と運輸安全委員会は、今後も連携して航空安全の向上に取り組む方針を示しました。



