ビザ免除国から「受け子」来日増加 SNS勧誘で短期滞在者を詐欺に利用
ビザ免除国から「受け子」来日増加 SNS勧誘で詐欺 (15.02.2026)

ビザ免除国から短期滞在者を利用した特殊詐欺が急増

特殊詐欺などへの関与を理由に、短期滞在の在留資格で入国した外国人の摘発事例が増加している。特に注目されるのは、ビザ(査証)が免除されている国や地域からの来日者が相次いで確認されている点だ。警察当局は、詐欺グループが「受け子」などの役割を外国人に担わせるため、手間のかからない入国手段を活用する手口が拡大している可能性を指摘している。

「ヒットアンドアウェー」手法で短期間で犯行と出国

昨年8月26日、大阪府警北堺署は堺市北区の施設で、特殊詐欺未遂容疑で台湾籍の男性(25)を逮捕した。この男性は、被害者役の女性に偽の札束を入れた封筒を渡そうとした瞬間を署員が確保した「だまされたふり作戦」の成果だった。府警の調べによると、男性は秘匿性の高い通信アプリを通じて、面識のない人物から中国語で指示を受けていたという。

男性は昨年8月17日、ビザが不要な台湾から観光目的で入国。起訴状では、同月25日にも福井県内で別の被害者から500万円をだまし取ったとされている。同時期に入国した別の台湾籍の共犯者も逮捕されたが、その同伴者は既に出国していた。府警は、訪日後に短期間で複数の犯行を重ね、すぐに国外へ脱出する「ヒットアンドアウェー」型の手法が用いられたとみている。

マレーシアからの事例でも同様の傾向

昨年8月から11月にかけては、マレーシアから短期滞在で入国した男性(27)が、詐欺未遂容疑などで逮捕・起訴された。起訴状などによれば、男性は昨年7月23日に来日し、8月5日には京都府内の高齢女性(66)から1500万円をだまし取ろうとしたとされる。京都府警は、男性が事件後すぐに帰国する予定だったと推測しており、これも短期滞在を悪用した典型的なケースと言える。

SNSを利用した勧誘とビザ免除の影響

警察庁のデータによると、短期滞在の在留資格で来日し、特殊詐欺などに関与したとして摘発された外国人は、昨年1月から10月までの暫定値で59人に上った。国・地域別では、マレーシアが34人、中国・台湾が22人、韓国、ベトナム、シンガポールが各1人となっている。注目すべきは、マレーシア、台湾、韓国、シンガポールが、短期滞在の場合にビザ免除の対象となっている点だ。

海外に拠点を置く指示役が外国人を集め、事件を起こさせているとみられる。外国人はSNSなどを通じて「日本で物を運ぶ仕事」などと誘われるケースが多く、これが来日の動機になっている。ビザ免除はインバウンド促進や国際交流拡大を目的とした措置だが、所得証明書などの書類提出が不要となるため、犯罪グループにとっては利用しやすい側面がある。

捜査関係者によると、日本語が不慣れな外国人も多いが、片言でのやり取りや、投資会社を装った偽の社員証などを提示することで、被害者の信用を得ていると分析されている。

警察の新たな対策と専門家の指摘

特殊詐欺の被害が拡大する中、政府は2024年12月、SNS上で「受け子」などを募集する「闇バイト」に捜査員が応募し、犯罪組織に接触する「仮装身分捜査」(雇われたふり作戦)の導入を決定した。全国の警察も、闇バイト募集の投稿に返信する形で、一般閲覧者への注意喚起を強化している。

外国人犯罪に詳しい東京都立大学の星周一郎教授(刑事法)は、「ヒットアンドアウェー型の犯行では、背後にいる指示役を追跡する捜査が難しくなる」と指摘する。さらに、「警察当局は入国管理局との情報共有を進め、詐欺グループによる外国人の勧誘実態を解明することが急務である」と提言している。

短期滞在とビザ免除制度の概要

短期滞在とは、観光や商用、知人訪問などを目的とした90日以内の滞在を指し、日本国内で報酬を得る活動は認められていない。ビザが免除される国・地域は74に及び、滞在可能期間は国によって異なる。例えば、韓国や台湾、マレーシアでは90日以内、タイやインドネシアでは15日以内など、条件が設定されている。