動物の命を絶つ「致死処置」に関する大規模調査で市民と専門家の認識の隔たりが浮き彫りに
成城大学を中心とする研究チームが、動物の命を絶つ「致死処置」について市民と様々な分野の専門家を対象に実施した大規模な意識調査の結果をまとめました。この調査には合計約7千人が回答し、それぞれの立場による認識の大きなずれが明らかになりました。研究班は3月にシンポジウムを開催し、詳細な調査結果を公表する予定です。
避けられない現実と不十分なガイドライン
致死処置は、食肉としての利用や感染症の拡大防止など、現代社会において避けて通れない現実です。また、獣医療用医薬品の開発のための動物実験や、ペットフードの原料として他の動物の命を支えるために必要とされるケースもあります。
しかし、こうした処置の実施方法や基準については、公的な規則やガイドラインが整備されていない分野が多く存在します。さらに、現場の実情に関する情報も積極的に共有・公開されてこなかったという問題があります。
その結果、適切な処置を行うために必要な予算が確保されにくい状況や、現場の担当者が重い判断と精神的な負担を一手に引き受けなければならないといった課題が生じています。
市民3300人と専門家3500人への大規模調査
市民を対象とした調査は2022年度に実施され、調査会社を通じて収集された約3300人の回答を詳細に分析しました。専門家への調査は2024年度に行われ、業界団体や学会などを通じて協力を呼びかけ、約3500人から回答を得ることに成功しました。
専門家調査には、主にペットなどの小動物を診療する臨床獣医師、食肉処理場や保健所など自治体で働く公務員獣医師、動物園や水族館の職員、野生動物管理に携わる専門家、動物実験の現場で働く研究者など、多様な分野の関係者が参加しました。
市民調査で目立つ「どちらとも言えない」回答
市民を対象とした調査では、動物の致死処置に関する質問に対して「どちらとも言えない」という回答が目立つ結果となりました。この傾向は、一般市民が動物の命を絶つ行為について複雑な感情を抱き、明確な立場を示すことに躊躇している現状を反映していると考えられます。
専門家の回答と比較すると、実際の現場で直面する現実と、一般社会の認識との間に大きな隔たりがあることが浮き彫りになりました。特に、処置の必要性と倫理的配慮のバランスについて、立場によって見解が分かれる傾向が確認されています。
研究チームは、今回の調査結果が動物の致死処置に関する社会的な議論を深めるきっかけとなることを期待しています。3月のシンポジウムでは、より詳細なデータ分析と現場の声を紹介し、課題解決に向けた具体的な提言を行う予定です。