警察のDNA型活用、法制化を求める会が名古屋市で結成 被害者遺族も参加し議論
警察のDNA型活用、法制化求める会が名古屋で結成

警察によるDNA型の採取や活用、保管に関するルールの法制化を目指し、弁護士ら有志の会が13日に発足する。きっかけは、無罪が確定した男性のDNA型データ抹消を国に命じた2024年の名古屋高裁判決。法整備も促した判決の趣旨を具現化しようと、男性と弁護団が立ち上がった。事件解決の鍵にもなるDNA型との向き合い方を広く考える契機にしようと、名古屋市で結成総会とともにパネル討論を開き、立場が異なる犯罪被害者遺族も登壇する。

DNA型抹消訴訟の経緯

2022年の名古屋地裁判決は、個人の尊重などを定めた憲法13条を根拠に、DNA型や指紋など秘匿性の高い個人情報を「公権力にみだりに利用されない自由が保障される」と指摘し、奥田さんのデータ抹消を国に命じた。名古屋高裁判決は「国民的議論を経た上で、憲法の趣旨に沿った立法的な制度設計が望まれる」とさらに踏み込んだ。

男性は名古屋市の薬剤師奥田恭正さん(69)。自宅前のマンション建設の反対運動中、現場監督を突き飛ばしたとして16年に暴行容疑で逮捕、起訴され、18年に無罪が確定。逮捕時に採取され、警察庁のデータベースに登録されたDNA型や指紋などの抹消を求めて提訴し、認められた。「究極の個人情報と言われるDNAは自分そのもの。自分を取り戻すために声を上げた」と話す。

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DNA情報の有用性と遺族の立場

一方で、犯罪捜査でDNA情報の有用性は実証されてきた。1999年に名古屋市西区のアパートで高羽奈美子さん=当時(32)=が殺害された事件では、現場から犯人のDNA型が採取されていた。愛知県警がDNA型を再捜査、照合し、2025年に安福久美子被告(69)が逮捕、起訴された。

高羽さんの夫、悟さん(69)は殺人事件被害者遺族の会「宙の会」の一員として、DNA情報から犯人の似顔絵を精緻に再現する捜査手法などの導入を訴えてきた。「法制化を目指す点でゴールは同じ。保管などのルールがあれば、より有効的な捜査活用にもつながるはず」とパネル討論への参加を快諾した。

パネル討論の内容

討論には奥田さんと高羽さんのほか、ドイツ憲法などが専門の小山剛・慶応大名誉教授も加わり、諸外国の実情を伝える。会長に就く予定の塚田聡子弁護士(愛知県弁護士会)は「それぞれの立場で発言してもらうので結論は読めないが、だからこそ、国民的議論につなげる一歩にしたい」と展望する。

結成総会は13日午後2時から、名古屋市熱田区の労働会館東館ホールで。オンライン配信(Zoom)もある。

現状の課題:警察の内規のみ

犯罪捜査でDNA型をどう取り扱うか。そのルールは警察の内規に当たる国家公安委員会規則しかないのが現状だ。「容疑者が死亡したとき」「保管の必要がなくなったとき」に抹消する規定はあるが、奥田さんの弁護団長を務めた国田武二郎弁護士(愛知県弁護士会)は「実態は不透明」と指摘する。

国田弁護士は高裁判決の確定後、奥田さんとともに警察庁に出向き、抹消手続き完了の確認を求めた。だが「該当するデータはありません」とする検索結果画面を印刷したという紙を見せられただけだった。「最後は『これで納得してください』の一点張り。運用が完全にブラックボックスになっている」

警察庁が容疑者のDNA型データベースの運用を始めたのは2005年。当時、同庁幹部は国会で「必要となる法的措置も含めて今後検討したい」と述べたが、法整備は進まなかった。

一方でデータ登録件数は年々増加し、24年末時点で約185万件に。全国の警察による鑑定件数は年25万~26万件に上る。最新の鑑定法による識別精度は「565京(けい)(兆の1万倍)人に1人」とされ、軽微な事件の捜査でも活用されるようになっている。

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25年には佐賀県警科学捜査研究所(科捜研)の元職員が、実際にはしていない鑑定をしたように装うなど多数の不正を続けていたことが判明。国田弁護士は「恣意的な運用がされてきたことの証左だ。法による適切な規制が不可欠」と訴える。13日に発足する会では12月、佐賀県弁護士会の弁護士を招き、不正問題を巡る勉強会を予定している。