ストーカー禁止命令が過去最多に 川崎事件を機に加害者治療への働きかけ強化
警察庁が2026年3月19日に発表した統計によると、ストーカー規制法に基づいて2025年に全国の警察が加害者に出した禁止命令は、前年比25.8%増の3037件に上り、過去最多を記録したことが明らかになった。禁止命令の増加は10年連続となり、警告も1577件で前年から6.6%増加している。
緊急禁止命令が全体の6割を占める
禁止命令は、つきまとい行為を行う加害者に対して出す行政処分であり、行政指導の警告よりも重い措置と位置づけられている。注目すべきは、禁止命令の約6割が、加害者への聴聞や警告を必要としない緊急禁止命令であった点だ。2017年の改正法施行後、この措置は急速に増加傾向を示している。
ストーカーが絡む事件の摘発件数も、前年比20.5%増の3717件で過去最多となった。罪種別では、ストーカー規制法違反が1546件、刑法犯などが2171件を数え、殺人事件は川崎市のストーカー殺人事件を含めて2件発生している。
川崎事件を契機とした対応強化
2025年に発覚した川崎市のストーカー殺人事件では、殺害された20歳の女性が元交際相手によるつきまとい行為を神奈川県警に相談していたにもかかわらず、加害者に対して警告や禁止命令が出されなかった。この痛ましい事件を教訓として、警察庁は同年9月にストーカー被害への対応を強化するよう全国の警察に指示を出した。
その効果は明確に表れており、全国の禁止命令や警告の件数は2025年10月以降、いずれも顕著な増加を示している。1月から9月までの月平均と10月から12月までの月平均を比較すると、約4割の増加が確認された。警察庁は、対応強化の取り組みがこの増加に影響したと分析している。
加害者への治療的アプローチの重要性
従来のストーカー対策は、被害者保護に重点が置かれてきたが、近年では加害者への治療的働きかけの重要性も認識されるようになってきた。単なる規制だけでは根本的な解決が難しいケースが多く、心理的な問題を抱える加害者に対する適切な介入が求められている。
警察庁の担当者は「禁止命令や警告は重要な手段ですが、それだけでは再発防止に限界があります。加害者の背景にある問題に目を向け、必要に応じて専門的な治療やカウンセリングにつなげる取り組みを強化していく必要があります」と述べている。
ストーカー被害の相談件数は依然として高止まり傾向にあり、社会全体でこの問題への理解を深め、包括的な対策を講じることが急務となっている。被害者支援と並行して、加害者への適切な介入が、より安全な社会の実現につながると期待されている。



