生後11か月の長女を暴行死させた事件で母親に無罪判決
福岡県川崎町で2018年、生後11か月の長女に暴行を加えて死亡させたとして傷害致死罪に問われた無職女性の被告(29歳)に対し、福岡地方裁判所は3日、無罪判決を言い渡しました。検察側は懲役8年を求刑していましたが、鈴嶋晋一裁判長は、被告の持病であるてんかん発作による事故の可能性を認め、故意の暴行とは断定できないと判断しました。
事件の経緯と争点
被告は2018年7月28日午前、当時の自宅で長女の頭部に暴行を加え、後頭部の骨折や急性硬膜下血腫などの傷害を負わせ、死亡させたとして2022年3月に起訴されました。公判では、長女の頭部傷害の原因が被告の暴行によるものか、それとも被告のてんかん発作に伴う事故によるものかが主な争点となりました。
被告は2012年にてんかんと診断され、2018年5月に長男の妊娠が判明してからは、胎児への影響を懸念し、抗てんかん薬の服薬を怠っていたことが判決で明らかになりました。事件当日、被告は長女の異変に気づき自ら119番通報し、救急隊員には「座らせてミルクを作っていたら、ゴトンという音がしたので見ると、横に倒れていた」と説明していました。
裁判所の判断と検察側の主張
検察側は、被告が救急隊員にてんかん発作による事故の可能性について説明しなかった点を指摘し、「暴行を隠す目的で事実と異なる説明をした」と主張しました。しかし、判決は被告が過去にてんかん発作で意識を失い、記憶が失われた経験があることを踏まえ、「発作に気づいていなかった可能性はあり得る」と指摘しました。
さらに、長女に目立った傷がなく、医師から骨折の説明を受けて初めて発作の可能性に思い至ったとしても不自然ではないとし、検察側の主張を退けました。医学的所見を検討した結果、てんかん発作で抱いていた長女を落下させたり、ともに転倒したりする事故でも同様の傷害が生じうると結論づけ、「間違いなく故意に暴行を加えたとはいえない」と判断しました。
今後の対応と社会的影響
福岡地方検察庁の森博英・次席検事は、「判決内容を精査し、上級庁とも協議の上、適切に対応する」とコメントしています。この判決は、てんかんなどの持病を抱える親の育児事故における刑事責任の線引きについて、重要な議論を呼ぶ可能性があります。
事件は裁判員裁判として審理され、社会の関心を集めました。無罪判決により、被告の今後の生活再建や、てんかん患者への支援策の見直しが課題となるでしょう。地域社会では、育児中の健康管理や緊急時の対応について、再考を促す機会となりそうです。



