知床遊覧船事故裁判、被告人質問開始 家族「公の場での真実明らかに」
知床遊覧船事故裁判、被告人質問開始 家族求める真実

知床遊覧船沈没事故裁判、被告人質問が開始

知床半島沖で遊覧船「KAZUⅠ(カズワン)」が沈没し、26人が死亡・行方不明となった事故をめぐり、業務上過失致死罪に問われた運航会社「知床遊覧船」の桂田精一社長(62)の被告人質問が3月2日、釧路地裁で始まった。事故発生から3年10カ月が経過する中、乗客の家族らは「公の場で真実を明らかにすることが誠意を見せる唯一の方法」と強く求めてきた。

事故の経緯と被告の対応

事故は2022年4月23日に発生。桂田被告は事故の4日後に会見を開き謝罪したが、その後は口を閉ざしていた。2025年11月12日の初公判では「私に出来ることは誠実に説明することです」と述べたものの、具体的な責任の所在については明確な説明を行っていない。

被告人質問は3日間にわたって実施される予定で、2日は弁護側、3日は検察側、4日には被害者参加人である乗客家族らが質問を行う。これまでの7回の公判では、検察側が事故当日の強風・波浪注意報を指摘し、船の沈没事故は予見可能だったと主張してきた。

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検察と被告側の主張の対立

検察側の主張によれば、運航管理者と安全統括管理者を兼務する桂田被告が、発航および航行の継続を中止する義務を怠ったことが事故の直接的原因であるとしている。悪天候が予想される中での運航継続が過失に当たるとの立場だ。

一方、被告側は、当初は午前中に帰港できるコースを前提に出航したが、船長が独断で午後に戻る「知床岬コース」に変更したと主張。さらに、事故の要因となったハッチの機能不全を被告は認識しておらず、この不具合がなければ当時の天候でも帰港できたとして「事故を予見することができず、過失はない」と無罪を訴えている。

桂田被告は初公判の罪状認否で「悪天候が予想されたため、船長に午後は引き返すと言われ承諾した。この内容が法律に反するかは分からない」と述べていた。

証人による重要な証言

公判では元従業員や船舶の専門家など18人の証人が出廷。元従業員は「多かれ少なかれ、事故が起きると思っていた」と証言し、当時の会社の安全体制に懸念があったことを示唆した。

2021年春、桂田被告は長く働いていた従業員を一斉に解雇。経験の浅い従業員だけが残り、被告について「船のことも、海のことも、なにもわからない」と話す者もいた。事故当日、乗客の受付を担当した元従業員は、海が荒れた場合に引き返す「条件付き運航」を前提とした案内を「指示されなかった」と証言している。

天候と船体の危険性に関する専門家証言

当時の天候について証言した海上保安官は、事故当時と同じような条件での再現実験結果を説明。2メートルの波を船が越えると「船の底が海面に打ち付けられ『ドン』という音がした」と述べ、一般乗客であれば「船体の壁に身体をぶつけて、けがをするおそれがある」と指摘した。

元海上保安官は、ハッチが閉まっていた場合でも、船長の経験年数を考慮すると「転覆する危険性の度合いは大きい」と証言。その一方で「操縦経験の豊富な人間なら、9割方帰ってこられる」とも続け、船長の技量と判断が重要な要素であったことを示唆した。

この裁判は、単なる刑事事件を超え、観光業における安全基準と経営責任の在り方を問う社会的な意味合いも持っている。乗客家族らは被告人質問を通じて、長年求め続けてきた真実の解明が進むことを期待している。

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