東京都内の親族里親制度、認知不足と要件の厳しさが課題 活用促進へ
東京都内の親族里親制度、認知不足と要件の厳しさが課題

東京都内で、子どもを育てられない親に代わり祖父母などの親族が養育する「親族里親」制度の活用が進んでいない。2024年度末時点で親族里親に委託された子どもはわずか24人で、里親全体の3.6%にとどまる。制度の認知度不足や所得要件の厳しさが背景にあると指摘され、専門家や関係者からは積極的な活用と社会的支援の必要性が訴えられている。

親族里親制度とは

親族里親は、児童福祉法に基づく里親制度の一つで、保護者のもとで暮らせない子どもを親族が引き取る仕組みだ。2011年の東日本大震災で多くの遺児が生まれたことを機に広く知られるようになった。里親制度には、親族里親のほかに、被虐待児などを受け入れる「専門里親」、養子縁組を前提とした「養子縁組里親」、一般的な「養育里親」の計4種類がある。

親族里親には養育里親などに支給される手当はないが、一般生活費が自治体から支給される。東京都では子ども1人当たり月額6万4720円が支給され、学校教育費や塾代などの支援も受けられる。また、児童相談所などの機関による支援対象にもなる。

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現状と課題

東京都内で里親(ファミリーホームを含む)に委託された児童数は2024年度末で661人。そのうち親族里親は24人で、全体の3.6%に過ぎない。都は2029年度までに里親等委託率を37.4%(2024年度末は17.8%)に引き上げる目標を掲げるが、親族里親の活用は進んでいない。

制度の認知度が低いことに加え、親族里親の認定要件も課題だ。所得要件(扶養親族の数により異なり、1人の場合年収約420万円)が厳しく、有識者からは「活用しにくい」との指摘がある。また、児童相談所を介さずに親族が養育を始めた場合、制度の適用対象外となるケースもある。

当事者の声

約20年前、妻のきょうだいの子ども2人を引き取った東京都足立区の町田彰秀さん(63)は、当時親族里親の制度を知らず、身内での相談で養育を始めた。2人に発達の遅れなどを感じ、児童相談所に相談したが、児相を介さずに養育を始めている場合は該当しないとして制度の適用は検討されなかった。町田さんは「親族だから仕方ないと思って引き取ったが、育てるのは難しかった」と振り返る。その後、里親支援の民間団体の援助を受けたが、「里親でない自分たちにはハードルが高かった」という。町田さんは自身の経験から、中途養育の家庭を支えるため勉強し、今春、区内に親子が集える居場所を開設した。

都議会での議論

東京都議会では2025年12月と2026年3月の定例会で、立憲民主党系会派の桶屋誠人都議が親族里親制度について文書質問を行った。桶屋都議は自身も児童養護施設で暮らした後、祖父母に育てられた経験を持ち、「制度の認知度が低く、親族が養育している家庭を支援につなげられていない」と指摘。都に実態把握を求めた。桶屋都議は「子どもにとって既知の関係を活用することが必要だ」と話す。

都育成支援課の六串知己課長は「保護者がいない子どもや虐待などで養育が適当でない子どもを把握した際は、親族が養育できるか調査・検討している。児相だけでなく、生活困窮の相談窓口など関係機関や社会全体に親族里親の制度を知らせていきたい」と述べた。

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専門家の見解

里親制度に詳しい日本女子大の林浩康教授(社会福祉学)は「祖父母などによる親族養育は少なくないが、日本では血縁者の養育は当然という感覚が強い。しかし、経済的に困窮する家庭もあり、特に思春期には育てる難しさも出てくる。一般的になじみのある親族に引き取られることは子どもにとって負担が少ないため、親族を積極的に里親として活用し、養育研修などで社会的に支えることが不可欠だ」と指摘する。