兵庫県農業共済組合(神戸市中央区)に勤務していた33歳の女性獣医師が2023年8月に自殺した問題で、長時間労働により持病が悪化したことが原因として労災認定されていたことが明らかになった。遺族の代理人弁護士らが15日、神戸市内で記者会見を開き、詳細を公表した。
時間外労働は月97時間に達する
弁護士によると、女性獣医師は2021年4月に同組合に入職。2021年6月から丹波家畜診療所、2023年4月から南あわじ家畜診療所で家畜の往診業務を担当していた。2023年6月中旬からの1カ月間の時間外労働は、前月の倍以上にあたる少なくとも97時間に達していた。この過重な労働により心理的負担が増大し、持病が悪化。同年8月に自宅で自殺した。
淡路労働基準監督署(兵庫県洲本市)は2024年1月23日付で労災と認定。労基署はパソコンの利用時間から2023年5月から8月までの時間外労働を算出し、本人の申告よりも約150時間多い実態を把握した。
診療頭数も過酷な実態
女性獣医師は丹波家畜診療所では1日最大69頭、南あわじ家畜診療所では1日最大21頭の診療をこなしていた。弁護士は「獣医師は全ての診療を自ら実施する必要があり、長時間労働になりやすいにもかかわらず、組合は労働実態を把握しようとしなかった」と指摘。「適切な支援や対策を受けられず、精神的に追い込まれて自死に至った」と述べた。
女性の父親は会見で「志ある若い獣医師の命の火が消えてしまったことの重みを組合に受け止めてほしい」と訴えた。
今後の対応と組合の見解
丹波家畜診療所の勤務時間に関する客観的資料は遺族側に提供されておらず、労災認定は南あわじ家畜診療所での労働時間に基づいている。弁護士は「丹波時代はさらに過酷だったと推測でき、今後明らかにしたい」と話す。
遺族側は今後、組合に対して裁判外での安全配慮義務違反に基づく損害賠償を求める方針。交渉が不調に終われば、裁判も視野に入れている。
組合は取材に対し「職員が亡くなられたことに対してお悔やみ申し上げます」とコメントしたが、今後の対応については「現時点ではお答えできない」としている。



