地下鉄サリン事件から30年、被害者の26%がPTSD症状を訴え続ける実態
地下鉄サリン事件30年、被害者26%がPTSD症状訴え続ける

地下鉄サリン事件から30年、被害者の26%がPTSD症状を訴え続ける実態

オウム真理教による事件の被害者支援に取り組む「オウム真理教犯罪被害者支援機構」(宇都宮健児理事長)は、1995年に発生した地下鉄サリン事件から30年を迎えた昨年、被害者や家族らを対象に健康状態などを尋ねる大規模なアンケート調査を実施した。その結果、被害者の約4人に1人に当たる26.1%に心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が疑われることが明らかとなり、事件から長い年月が経過しても心身の不調が継続している深刻な実態が浮き彫りとなった。

11年ぶりの調査で浮かび上がった継続的な健康問題

今回の調査は2014年以来、実に11年ぶりに実施されたものだ。昨年11月に約1000人に対して調査票を郵送し、被害者276人と家族らを合わせた計323人から有効回答を得た。前回調査では317人が回答しており、比較可能なデータが蓄積されている。

心理テストを用いてPTSDの症状を詳細に分析したところ、症状を有するリスクが高いと判定された人は被害者で26.1%(前回調査では29.1%)、家族では33.3%(同58.8%)に上った。この数字は、時間の経過にもかかわらず、多くの人々が依然として心理的なトラウマと向き合い続けていることを示している。

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具体的な症状と日常生活への影響

心身の状態に関する質問では、被害者の79%が「目が疲れやすい」と回答し、そのうち7%は「症状がいつもあって我慢できない」と訴えた。これはサリンガスによる直接的な影響が長期間にわたって持続している可能性を示唆している。

自由記述欄には、被害者たちの生の声が数多く寄せられた。「電車に乗れない。映画館や会議室などの密室もだめ」という交通機関や閉鎖空間への恐怖を語る声や、「頭痛薬を飲みながら書いている。せめて医療費を支援してほしい」という経済的負担への切実な訴えが目立った。これらの声は、事件が単なる過去の出来事ではなく、現在進行形の苦悩として存在し続けていることを如実に物語っている。

支援の不足と自己解決を迫られる現実

調査を担当した共立女子大学の高橋幸子助教(社会心理学)は、東京都内で開かれた記者会見で、ほとんどの症状が前回調査から改善していない点を指摘した。さらに、「被害者が望む経済的な支援や定期的な健康診断は実現しておらず、結局は自分で何とかしなければならない現実を突きつけている」と述べ、公的な支援体制の不備を強く批判した。

死刑執行後も続く心理的葛藤

前回調査後の2018年には、教団元代表の麻原彰晃(本名・松本智津夫)元死刑囚ら教団元幹部13人の死刑が執行された。今回の調査で執行後の気持ちを尋ねた項目では、「気持ちに区切りが付いた」と答えた被害者はわずか7%に留まり、「執行されても気が晴れなかった」が41%に達した。

この結果について、筑波大学の松井豊名誉教授(社会心理学)は、「健康不安などが続いている現状が、執行後も気持ちの区切りをつけさせないポイントになっているのではないか」と分析。身体的・心理的な苦痛が継続していることが、事件の法的決着と個人の心理的決着の間に大きな乖離を生み出している可能性を示唆した。

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事件の概要と調査の意義

地下鉄サリン事件は1995年3月20日に発生し、14人が死亡、6000人以上が重軽傷を負った戦後最悪のテロ事件の一つである。今回の調査結果は、大規模災害やテロ事件の被害者支援において、長期的かつ包括的なケアの重要性を改めて浮き彫りにした。事件から30年という節目を迎えてもなお、多くの被害者が癒えることのない傷を抱え続けている現実は、社会全体で共有すべき重い課題と言えるだろう。