「独身偽装」に110万円賠償命令 マッチングアプリ交際5年、妊娠後に既婚者判明で流産
「独身偽装」に110万円賠償命令 アプリ交際5年、妊娠後に既婚者判明

マッチングアプリを通じた結婚につながる出会いが定着する一方、既婚者であることを隠して性的関係を持つ「独身偽装」の被害が深刻化している。東京都内の30代女性が、既婚者であることを隠した男性とアプリで知り合い、妊娠後に事実を知らされて流産したとして、損害賠償を求めた訴訟で、東京地裁は男性に110万円の支払いを命じた。

5年にわたる交際の末に発覚した事実

女性の証言などによると、大手総合商社に勤務する40代の男性と2019年、マッチングアプリで知り合った。数回のメッセージ交換を経て都内の飲食店で対面した際、男性は「付き合っている人はいない」と話したという。その後、交際に発展したが、男性は「休日はスポーツで忙しい」として、会うのは平日の夜のみ。互いの自宅を訪れたり、旅行に出かけたりすることはなかった。男性から「婚約破棄で傷ついている」と打ち明けられたため、女性はこれ以上傷つけるまいと、結婚などの将来の話は避けていた。

妊娠報告で一変した関係

交際5年目の2024年、女性は妊娠が判明。「うれしくて子どもの名前を考えていた」と振り返る。しかし、男性に報告すると「子どもは欲しくない」と中絶を求められ、問いただすと既婚者であることを明かした。女性はショックで流産し、2025年6月に人格権や性的自己決定権を侵害されたとして、慰謝料など550万円を求めて提訴した。法廷で男性は「遊び目的で割り切った関係と思っていた」と繰り返し、既婚者であることを隠した理由を説明した。

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裁判所の判断

2026年4月23日の判決で、坂本智裁判官は男性が「結婚の現実的な可能性があるように装い、女性に性交渉に応じさせた」と認定し、女性の自己決定権を侵害したとした。また、5年に及ぶ交際の末、妊娠が分かると突き放した男性の対応を「不誠実」と断じ、110万円の支払いを命じた。女性は閉廷後、「相手に非があると認められた。けじめをつけて、前に進める」と語り、妊娠後に用意した母子手帳は今も手元にあるという。

マッチングアプリの普及とトラブル

こども家庭庁の調査によると、2024年に直近5年間で結婚した40歳未満の2000人に出会いのきっかけを聞いたところ、「マッチングアプリ」が25.1%で最多となり、職場や仕事関係の20.5%を上回った。アプリの利用が広がる一方、独身偽装によるトラブルも増加。しかし、刑事責任を問うのは難しいとされる。高橋麻理弁護士は、独身を装った相手との性的行為は「同意があった」と見なされやすく、不同意性交等罪には該当しにくく、金銭要求がなければ詐欺罪も成立しにくいと指摘する。

被害を防ぐために

高橋弁護士は「マッチングアプリやSNSでは相手の素性を確認する手段が限られる」と述べ、「重要なのは相手を知ろうとすること。出会いの性質上、相手のことを実は何も知らないかもしれないという意識を持ち、違和感や不信感をキャッチする姿勢が大事だ」と警鐘を鳴らす。女性は「裁判を起こすのは負担で、泣き寝入りする女性も多い。独身偽装を刑罰化し、被害者が増えない社会になってほしい」と願っている。

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