交通事故の逆境を乗り越え、看護師国家試験に合格
看護師を志し福島医科大学に通っていた最中に交通事故に遭い、数カ月間意識不明の状態が続いた小針千穂さん(27)。懸命なリハビリを重ねて復学し、卒業から2年を経て、3度目の挑戦で看護師の国家試験に見事合格を果たした。
「患者の立場で支えられた経験を生かしたい」
体や脳に障害が残りながらも、看護師になる夢を諦めずに追い続けた小針さんは、「患者の立場で多くの人に支えられてきた。その思いを生かし、私にしかできない看護をしたい」と語る。今後は教える側として学生を見守る立場に就く予定だ。
医療の道への思いと突然の事故
いわき市出身の小針さんは、小学生の頃に課外授業で助産師が不足する同市の状況を学び、医療の道への思いが芽生えた。磐城高校卒業後、福島医大看護学部に入学。実習で病気の人や高齢者らと接するうち、看護師を目指す決意を固めた。
しかし、2019年末の大学3年時に交通事故に遭い、数カ月後に目を覚ました時は、車いすがなければ移動できず、声を出すこともままならない状態だった。中学から大学までソフトテニス部に所属し、アカペラサークルでも活動していた活発な自分にとって、「こんな自分は信じられない」という気持ちが募り、「何度も何度も死のうと思った」と当時を振り返る。
高次脳機能障害と記憶障害との闘い
事故で高次脳機能障害を患い、記憶障害も生じたが、「看護師になりたい思いは一度も忘れたことはなかった」と小針さんは強調する。新型コロナウイルス禍で使命感を持って働く医療従事者と接するうち、「事故に遭ったから看護師になれないなんて許せない」と思うようになった。
1年半に及ぶ入院生活では、言語療法、作業療法、理学療法のリハビリを必死に重ねた。患者として過ごした日々で「看護師になりたい」という思いはさらに強まり、患者の立場で感じたことを記した「看護ノート」も自作した。
復学から国家試験合格までの道のり
事故から3年が経過した2023年1月に復学。つえを使いながら実習に臨んだ。卒業後は福島医大で事務の仕事をしながら国家試験の勉強に励んだが、記憶が定着しづらく苦戦した。
そこで、自分が話した言葉を録音して繰り返し聞くなど、独自の覚え方を工夫。3年目にしてようやく合格を掴み取った。国家試験合格を報告した主治医からは「復活できたことは奇跡だ」と言われたという。
家族の支えと信念の強さ
母の三津子さん(55)は、「復学も卒業も、国家試験なんて全然考えられないような状態の中、よく看護師になりたいと言い続けたなと思う。親も負けたという感じ」と、娘の信念の強さと努力を称える。
小針さん自身も、「私は患者になって、本当にたくさんの人に救われた」と振り返り、「障害があるし、看護師を目指してはいけないんだと何度も思った。その時思い出したのは、患者としてさまざまな人に支えられてきたこと」だったと語る。
新たな使命:学生への指導
今後は福島医大看護学部で授業や実習をサポートする仕事に就く。13日には国家試験合格後初めての授業に臨む予定だ。医療人としてのスタートを切る学生たちに、「私にしか伝えられないことを伝える」のが使命だと感じている。
小針さんの闘病経験と不屈の精神は、これから看護の道を志す若者たちに大きな希望と勇気を与えることだろう。



