ストレスチェック単独ではうつ病による休職予測に限界
企業で働く従業員が受ける「ストレスチェック」の検査結果のみでは、精神疾患を理由とした長期休職者を高い精度で予測することは困難であることが明らかになった。大阪公立大学の研究グループが、のべ23万人以上の検査データと機械学習を用いた分析を行い、この結論に至った。実用的な予測モデルを構築するためには、健康診断の結果など他の情報を組み合わせる必要性が示唆されている。
ストレスチェック制度の現状と課題
ストレスチェックは、従業員が仕事の負担感や不安の有無など57項目の質問票に回答し、ストレス状態を評価する検査である。結果に基づいて医師による面接指導などが実施され、働く人々のメンタルヘルス確保や職場環境の改善に寄与するとされている。国は50人以上が働く企業に対して年1回の実施を義務付けており、さらに2028年5月までに50人未満の企業にも同様の義務が拡大される予定だ。
研究グループによれば、ストレスチェックの結果を活用することで長期休職者を早期に発見できるという期待から、これまで様々な研究が行われてきた。しかし、その有効性については一致した見解が得られていなかった。今回の大規模なデータ分析により、ストレスチェック単体での予測精度の限界が浮き彫りとなった形だ。
今後の研究と実践への示唆
この研究結果をまとめた論文は国際学術誌に掲載された。研究を主導した大阪公立大学の岩崎進一氏らは、ストレスチェックがメンタルヘルス対策の重要なツールであることを認めつつも、より精度の高い予測には複数のデータソースの統合が不可欠だと指摘している。
具体的には、定期健康診断の結果、勤務状況、職場の人間関係など、多角的な情報を組み合わせることで、リスクの高い個人をより正確に特定できる可能性がある。これにより、企業はより効果的な予防策や早期介入プログラムを設計できるようになるだろう。
メンタルヘルス不調による経済的損失は年間7.6兆円に上るとの推計もあり、職場における精神保健対策の重要性は増している。今回の研究は、単一の検査に依存するのではなく、包括的なアプローチの必要性を改めて示した点で意義深い。今後の研究では、さまざまなデータを統合した予測モデルの開発が期待される。
