検案医不足が深刻化、福岡県で高齢化に伴う変死体増加で体制維持に危機感
検案医不足が深刻、福岡県で高齢化で変死体増加

検案医の深刻な不足、福岡県で高齢化に伴う変死体増加が背景

屋外や自宅で発見される変死体の死因を究明する「検案」を担う「検案医」の人材確保が、福岡県で深刻な課題となっている。急速に進む高齢化により遺体の検案件数が増加する中、慢性的な担い手不足に陥っており、県警や医師会が研修や協定を通じて、犯罪死を見逃さない体制の維持と業務への理解促進に力を入れている。

研修会で強調される検案医確保の緊急性

「高齢化の進展で多死社会を迎えつつある。検案医の確保は喫緊の課題だ」。1月末、福岡市博多区の県医師会館で開催された研修会で、一宮仁・県医師会副会長が参加した医師約50人を前にこう訴えた。この研修会は、検案の基本的な能力の維持と向上を図るため、同会が毎年実施しているものである。

当日は、殺人事件などを担当する県警捜査1課員が検案の必要性や死体検案書の作成方法を説明。さらに、県警察医会の大木實会長(78)が、40年以上の経験で約8000体を検案してきた事例を紹介し、「皆さんもどうか現場に赴いていただきたい」と参加者に呼びかけた。

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増加する死亡者数と検案依頼、担い手不足の実態

県のデータによると、福岡県内の2024年の死亡者数は6万2933人で過去最多を記録した。県警が取り扱う遺体(交通死を除く)も増加傾向にあり、2024年には統計が残る1985年以降で最多の6668体に達した。このうち、独居の65歳以上が約4割を占めている。

6668体のうち、屋外で見つかったり自宅で孤独死したりして事件性の有無の判断が必要な遺体として、県警が医師に検案を依頼したのは4516体に上った。これは2021年(3255体)の約1.4倍であり、県警は今後も増加すると見込んでいる。

しかし、検案は悲惨な遺体と向き合う機会が多く、昼夜を問わず依頼されるため、敬遠する医師も少なくない。県内の36警察署は、それぞれ医師1~2人に依存している状況だ。2024年には50体以上を検案した医師が26人おり、全体の約7割の検案を対応していた。

高齢化により深夜帯の依頼に応じられなくなった医師もおり、遠方の医師に長時間かけて臨場してもらう必要があるケースも発生。これにより、遺族への遺体の返還が遅れるリスクも指摘されている。

若手育成と人材確保に向けた取り組み

県警や各地の医師会は、若手の育成と人材確保に乗り出している。例えば、戸畑署と北九州市戸畑区医師会は昨年12月、検案医確保に関する協定を締結。主な検案医2人が不在時に協力する医師の名簿を共有し、地元の医師向けの研修会を定期開催することを定めた。

また、主に医師1人で柳川署からの依頼を請け負っていた柳川山門医師会(柳川市)も2020年に協力医師の制度を導入。1期2年で医師6人を選び、主な検案医が対応できない場合に応じる体制を整えている。

専門家の声と今後の展望

県警の捜査幹部は「犯罪死を見逃さないためにも検案医の確保は非常に重要だ」と強調する。大木会長は「大変な業務だが、誰かがやらねばならず、様々な人の死にふれることで見識も広がる。一部に負担が偏らないよう皆で支え合う仕組みを整え、担い手を増やしたい」と語った。

検案とは、医師が遺体の発見状況や既往歴などから死因を判断する業務を指す。検案した医師が作成する「死体検案書」は死亡届の提出時に必要となる。福岡県内では、県警の依頼を受けて現場で実施するほか、救急搬送されて事件性がないと判断された場合は搬送先の医師が行うケースもある。

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