ステージ4がんと闘いながら大阪マラソンに挑んだ元刑事の物語
2026年2月22日に開催された大阪マラソンで、最も深刻なステージ4のがんと闘病しながら走り続ける男性の姿が、多くの観客の心を打ちました。大阪府警の元刑事、木村真一郎さん(58歳・大阪府岸和田市)は、昨年に続いて2年連続で大会に参加。痛みと闘いながら8キロまで進んだものの、制限時間にかかってリタイアとなりましたが、その不屈の精神に沿道からは惜しみない拍手が送られました。
病魔と向き合いながらの挑戦
木村さんは2022年に直腸がんと診断され、その後大腸や肝臓への転移が確認されました。現在も抗がん剤治療を続けながら日常生活を送っていますが、病状は厳しい状況が続いています。腰や尻に常に痛みを感じ、最寄り駅までの10分の道のりも休憩なしでは歩けず、夜は痛みで眠れない日々が増えているといいます。
「走ることを生きる糧にしたい」という思いから、昨年初めて大阪マラソンに挑戦した木村さん。昨年は30キロ地点でリタイアしましたが、多くの友人や同僚から「力をもらった」という連絡を受け、「来年こそ完走を」と決意を新たにしていました。
痛み止めを飲んでの出場、仲間の支え
今年のレースでは、1月以降は痛みのため一度も練習ができない状態でしたが、痛み止めを服用してスタートラインに立ちました。「一緒に頑張りたい」と同僚5人も出場し、同期たちが沿道から声援を送るなど、周囲の温かいサポートに包まれての挑戦となりました。
走り始めてすぐに腰や尻に激痛が走りましたが、沿道から聞こえる「頑張れ」の声が力に。3キロまでは走り、その後は走ったり歩いたりを繰り返しながら前進しました。しかし、出走から1時間半が経過し、御堂筋に入る目前の8キロ付近で、タイムオーバーを示す最後尾の「通告車」に追い越され、今年もリタイアを余儀なくされました。
がんを克服した元阪神選手との感動の対面
レース後、木村さんを待っていた特別な人物がいました。大腸がんを治療しながらプレーを続け、昨年引退した元阪神タイガースの原口文仁さん(33歳)です。原口さんはこの日、自身初のフルマラソンに挑戦し、5時間25分12秒で見事完走を果たしていました。
木村さんは原口さんを目標の一つとしており、今年も原口さんのユニホーム姿で大会に臨んでいました。本紙の取り次ぎにより、大阪市内で約10分間の面会が実現。木村さんが「原口さんの頑張りが僕らを元気づけてくれている」と感謝の言葉を伝えると、原口さんは「絶対に治すと思い込んだことでその通り進んだ。根拠がない思い込みでもいい。一緒に頑張りましょう」と温かい励ましの言葉をかけました。
「根拠のない思い込み」を胸に前へ
木村さんは今大会を振り返り、「体力の衰えを痛感したが、挑戦する姿をもう一度見せられたことは満足」と語りました。そして原口さんの言葉を受け、「『根拠のない思い込み』を座右の銘にして体を良くし、また走りたい」と新たな決意を表明しました。
ステージ4という重い病と向き合いながらも、前向きに挑戦を続ける木村さんの姿と、がんを克服して新たな目標に挑む原口さんの対面は、多くの人々に希望と勇気を与える感動的な瞬間となりました。二人の闘いと絆は、スポーツの持つ力を改めて感じさせる出来事として記憶に刻まれることでしょう。



