高知県初のホームホスピス「みのりの家」開設、末期がん男性が「話し声の中で眠れる」安らぎの日々
高知初ホームホスピス開設、末期がん男性が「話し声の中で眠れる」

高知県初のホームホスピス「みのりの家」が開設、末期がん患者が「話し声の中で安らかに眠れる」環境を実現

最期までの時間を、病気や障害があって自宅で過ごすことが難しい人たちのためのホームホスピス「みのりの家」が昨年12月、高知市若草町にオープンしました。高知県内では唯一の施設であり、運営責任者の呉静恵さん(62)は「友人や家族がいつでも来られて、共に友として、伴って暮らす『ともぐらし』を実現したい」と語っています。

木のぬくもりにこだわった「みのりの家」の特徴

見た目は大きな一軒家で、玄関から廊下奥のリビングに向かうと、中央の大きなテーブルを囲む住人らの笑い声が聞こえてきます。「みんなの願いが実りますように」と名付けられたこの場所で暮らすのは、末期がんや障害などを抱える人たちです。

ホームホスピスは看護師や介護福祉士が常駐し、自宅のような環境で最期まで過ごせる施設です。病院や介護施設と違い、入居者を「患者」や「利用者」ではなく「住人」と呼び、自分らしく生きることを目指しています。施設の種類に明確な定義はありませんが、全国ホームホスピス協会(宮崎市)によると、約20年前に自宅で過ごしたいと望むも、医療的な事情などでかなわない人々の受け皿として誕生しました。現在は24都道府県に64か所あるとされています。

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呉さんの想いと施設の工夫

呉さんは看護の専門学校を卒業後、病院で勤務し、患者の入退院や死去を経験する中で、看取りに関わりたいという思いが強まりました。ホームホスピスの開所を目指し、経験を積むために2014年に訪問看護ステーションを始めました。

2024年春には自費で土地を購入し、日本財団の助成を受けてホームホスピスのための建物を建設。昨年12月、念願の開所がかなったのです。住人用の個室に畳を敷いたり、昔の日本家屋をイメージしてリビングの天井を高くしたりと、自分の家と感じてもらえるよう工夫を凝らしています。自身も泊まり込んで対応する呉さんは「ここだと住人とずっと一緒に過ごせ、彼らがどんな寝息、寝方をしているかもわかる。これがまさにやりたかったこと」と語ります。

末期がん男性の体験と安らぎの日々

開所時は60~80歳代の男女3人が入居しました。その一人、63歳の男性は呉さんの「ともぐらし」の考えにひかれて入居を決めました。男性は会社員だった2024年秋、腎臓がんの「ステージ4」と診断されました。抗がん剤などの治療を行いましたが、病は進行。昨年7月、主治医に「余命8か月」と告げられ、最期について考えるようになりました。

治療の副作用にも疲れていた頃、みのりの家の開所記念講演で呉さんと出会いました。入居の希望とともに、男性は「がんだろうが何だろうが働いて社会とつながっていたい」と伝え、呉さんの訪問看護ステーションで勤務することに。9月からマネジャー補佐として働き、11月に脳卒中で倒れるまで呉さんを手助けしました。

退院後にみのりの家に入居し、男性が感じたのは音の違いでした。「病院は機械の音が聞こえてくる。ここは毎日笑い声が絶えないし、話し声や家事の音の中で眠りにつくこともできる」。死の恐怖と闘いながら、みんなが集まるリビングで過ごし、住人や呉さんと冗談を言い合いました。友人も頻繁に訪問し、「これが生きているってことなんだと思う」と語る男性は、涙を流したといいます。

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最期の時と呉さんの理念

2026年1月7日早朝、男性はみのりの家で息を引き取りました。一晩お別れの場を設け、30人以上の男性の家族や友人が訪れたと伝えられています。呉さんは「一度しかない人生で、みのりの家を最後の舞台とする住人たちに、望む生き方を全うしてもらう。私たちは裏方として、そのサポートをしていきたい」と話していました。

この施設は、終末期を迎える人々に尊厳と安らぎをもたらす新たな選択肢として、高知県内で注目を集めています。木のぬくもりと家族のような雰囲気が特徴の「みのりの家」は、医療と生活の境界を越えたケアの形を示しています。