成年後見制度の闇 90代父親の後見取り消し 診断書「訂正」の謎に娘が告発
成年後見制度の闇 90代父親の後見取り消し 診断書訂正の謎 (08.04.2026)

成年後見制度の闇 90代父親の後見取り消し 診断書「訂正」の謎に娘が告発

認知症などで判断能力が低下した人に代わり、別の人が財産管理などを行う成年後見制度。この制度をめぐり、行政と家族の深刻なトラブルが相次いでいる。東京都港区で発生した90代男性のケースは、その典型例として注目を集めている。

強制入院と突然の成年後見申し立て

2022年3月、東京都港区のマンションに単身で暮らしていた90代の男性が、埼玉県内の病院に運ばれた。これは本人の意思や救急搬送ではなく、市区町村長の権限で強制的に入院させる「医療保護入院」だった。

首都圏に住む娘がこの事実を知らされたのは、約2カ月後のことである。港区から届いた書面には「認知症で父親の判断能力が低下しており、成年後見人を選任する必要がある」と記されていた。

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驚いた娘はすぐに港区の担当職員に連絡。「成年後見の申し立ては必要があれば自分たちで行うので、父親の居場所を教えてほしい」と申し出た。しかし、担当職員は「個人情報」を理由に入院先を教えようとしなかった。

100件以上の電話と面会拒否

既婚で父親と離れて暮らしていた娘は、虐待の疑いもないのに隔離された父親の安否を気遣い、自力で入院先を突き止めようと決意する。首都圏の病院や高齢者施設に100件以上も電話をかけ、22年7月にようやく埼玉の病院を特定した。

しかし、病院を訪れようとすると面会を拒否される。弁護士を同伴すれば面会可能と知り、交渉の末に弁護士と共に病院へ向かうと、港区職員も待機していたという。

父親と面会した弁護士は「お父さんは認知症や精神障害があるように見えない。記憶もしっかりしている。娘さんに会いたがっている」と報告。娘とも面会した父親は、その日のうちに退院した。

「後見相当」の申し立てと実態との乖離

しかし、問題はここで終わらなかった。港区は既に東京家庭裁判所に対し、成年後見開始の申し立てを行っていたのだ。身寄りがなかったり虐待の疑いがあったりする人を対象とする「首長申し立て」によるものだった。

娘は父親の入院を知ってから、弁護士を通じて「首長申し立ては絶対しないでほしい」と要請していたが、聞き入れられなかった。さらに、港区が6月に行った申し立ては「後見相当」——判断能力が3段階で最も重い「完全に欠けている」とみなされるレベルだった。

この申し立ての根拠となったのは、父親が強制入院させられた病院の担当医が書いた「アルツハイマー型認知症」という診断書である。しかし、退院後の父親は排泄や入浴はもちろん、食事や買い物も一人でこなし、日常生活に何の支障もなかった。

診断書の「訂正」と制度の構造的問題

東京家庭裁判所は同年9月末、鑑定医による鑑定後、港区の申し立て通り「後見相当」で後見開始を認めた。家族が望まない成年後見がついた根拠となった診断書には、謎の「訂正」が記されていた。

当初は判断能力がない「後見相当」とされた鑑定書が撤回され、「後見ないし保佐相当に悪い状態ではない」と訂正されたのである。この診断書の「訂正」をめぐり、事態はさらに迷走を深めている。

こうしたトラブルを受け、港区長は調査に乗り出すと表明。成年後見制度の運用における課題が浮き彫りとなった。制度本来の目的である「本人の保護」と、家族の意思尊重のバランスが問われる事案として、今後の対応が注目される。

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