米オープンAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)をはじめ、人工知能(AI)開発に携わる企業のトップや研究者らが3日、バイオセキュリティーの迅速な強化を米議会に求める書簡を提出した。書簡では、既にAIがウイルス学者を超える能力を有しており、「生物兵器」を作成するための障壁が急速に取り払われつつあると警鐘を鳴らしている。
AIによるウイルス設計の現状
近年、生物学に特化したAIモデルが次々と登場している。中には、ウイルスのたんぱく質設計図となるDNA配列を設計できるモデルも存在する。さらに、設計された配列通りのDNA合成を受託する企業もあり、悪意ある人物が危険なウイルスを作成しようとしても、監視が追い付かないとの指摘が出ている。昨年には、米国の研究グループがAIを活用して実際に機能する人工ウイルスを設計したと発表し、大きな衝撃を与えた。
異例の署名者たち
こうした背景を受け、今回の書簡は世界的なAI開発をリードする大物たちが名を連ねる異例のものとなった。署名者には、たんぱく質構造予測AIで2024年にノーベル化学賞を受賞したデミス・ハサビス氏、高性能AI「クロード・ミュトス」を開発したアンソロピックのダリオ・アモデイCEO、さらにはメタやマイクロソフトのAI研究者らが含まれている。
求める対策の具体的内容
書簡が求めているのは、合成DNAの受託企業や合成に使用する機材の製造企業に対し、以下の監視仕組みを義務付けることだ。
- 懸念されるDNA配列の審査
- 顧客の確認
- 注文履歴や配列データの保存
これらの措置により、危険なウイルスの作成を抑止し、仮に作成された場合でも追跡が可能になるとしている。書簡は喫緊の課題として、「議会は今会期中に行動を起こすべきだ」と強く訴えている。
米政権の対応の遅れ
DNAなどの合成に関する監視ルールは、バイデン前政権下で整備が進められたが、トランプ大統領が適用を停止する大統領令に署名した。その後、新たなルールを作成するとされていたが、未だに実現していない。今回の書簡は、こうした政治的な停滞を打破しようとする試みでもある。
書簡は、ウェブサイト「screendna.org」で公開されている。



