ロシアの化学兵器保有継続に国際的懸念が高まる
ロシアの反政権運動指導者であるアレクセイ・ナワリヌイ氏の殺害に使用されたとされる毒物エピバチジンについて、モスクワの国立研究所がその合成に取り組んでいたとの見方が強まっている。この研究所は、過去にロシアを裏切った情報機関員らの襲撃に使用された神経剤ノビチョクを開発したとされる実績を持つ。これにより、ロシアが化学兵器の保有や生産を継続している可能性に対する国際的な懸念が急速に高まっている状況だ。
エピバチジンの特性と研究所の関与
英BBCロシア語版の報道によれば、エピバチジンは1974年に発見された神経毒であり、その化学的な構造は1992年に解明された。米政府系ラジオの記者がSNSに投稿した情報では、モスクワの国立研究所が2013年にカエルの毒に由来するエピバチジンの合成方法に関する論文を発表していたことが明らかになっている。研究所の元職員はBBCに対し、「この毒は食べ物や水、皮膚など様々な経路で体内に侵入する可能性がある」と語っており、その危険性を強調した。
ナワリヌイ氏襲撃事件の経緯と国際的な対応
ナワリヌイ氏は2020年8月に国内線の機内で意識不明となり、殺傷能力の高いノビチョク系の神経剤を使って襲撃されたとみられている。これを受けて米国は2021年3月、襲撃に関与したなどとしてロシア政府高官や同研究所を制裁対象に指定した。米国務省は当時、研究所について「化学兵器を研究開発する役割を長年担い、ノビチョクを開発した」と指摘している。
ノビチョクは2018年に英国で起きたロシア軍情報機関の元大佐と娘の襲撃事件でも使用されており、その危険性は国際的に認識されている。ロシアは化学兵器禁止条約の締約国として条約の順守を強調してきたが、実際の行動との乖離が問題視されている。
化学兵器禁止条約との矛盾とウクライナ情勢
化学兵器禁止機関(OPCW)は2017年、ロシアが申告した化学兵器約4万トンの廃棄を完了したと発表していた。しかし、ロシアはウクライナ侵略においても化学兵器の使用を度々指摘されており、条約違反の疑いが強まっている。
エピバチジンによる毒殺を指摘した欧州5か国は2月14日の声明で、「ロシアは自国の化学兵器を全て廃棄していない」として強い懸念を示し、OPCWに通知したことを明らかにした。これにより、ロシアの化学兵器保有継続問題は国際的な安全保障上の重大な懸案事項として浮上している。
この状況は、ロシアが国際的な規範を無視して化学兵器を開発・保有している可能性を示唆しており、今後の外交交渉や制裁措置に影響を与えることが予想される。各国は監視を強化し、透明性のある説明を求める動きを加速させている。