UNRWA清田保健局長が警告、ガザで止められなかった戦争が他地域で再現される危機
UNRWA清田氏、ガザ戦争の教訓が他地域で繰り返される危険性を指摘

UNRWA清田保健局長がガザ戦争の教訓を警告、国際法不遵守が他地域紛争を誘発

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の清田明宏保健局長が、読売新聞オンラインへの寄稿を通じて、パレスチナ自治区ガザの厳しい状況と、それが国際社会全体に及ぼす深刻な影響について警鐘を鳴らした。現在、世界はイランをめぐる新たな戦争の行方を固唾をのんで見守っているが、この戦争を理解するためには、まずガザの現状から目を背けることはできないと指摘している。

ガザでの停戦後も続く人道危機と国際法の機能不全

ガザでは2024年10月にいわゆる停戦が成立し、復興を含む枠組みが国連安全保障理事会(安保理)を含む国際的な議論の対象となった。しかし、現実のガザでの状況はほとんど変わっていない。停戦後も犠牲者は出続け、人々の移動は厳しく制限されたままであり、人口約220万人の人々は、戦前よりもはるかに狭い地域に押し込められたまま生活を強いられている。

言い換えれば、「ガザでの戦争」は実質的には終わっておらず、国際法、とりわけ国際人道法が現実の戦場で十分に尊重されていない状況が続いている。ガザで国際法を守らせる仕組みが機能しなかったことが、結果として次の戦争を許す環境を生み出してしまったと清田氏は分析する。

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膨大な人的・物的被害と社会基盤の崩壊

ガザ戦争を振り返ると、本来なら防ぎ得た一般市民の犠牲や、守られるべき人道支援が十分に守られなかった。国連人道問題調整事務所(OCHA)の発表によれば、7万人以上の死亡者が出ており、そのうち7割以上が女性や子どもを含む一般市民と言われている。この7万人の死亡を人口比で考えると、日本で約400万人が死亡した規模に相当し、東京大空襲が40回から50回繰り返されたのと同じ規模である。

さらに、住居や社会インフラの攻撃も続き、ガザの全建物の81%が、上下水道施設の89%が全壊または半壊の被害を受けた。必要な人道支援物資の搬入は遅れ、人々の生活基盤は崩壊し、ガザ市では昨年7月、総合的食料安全保障レベル分類(ICP)に基づき飢饉が確認される事態にまで至った。

国際社会の責任と日本に期待される役割

清田氏は、これらは全て人災であり、国際法や国際人道法を遵守していれば防ぐことができた、あるいは被害を大きく軽減できたはずだと強調する。しかし、現実にはそれが守られず、戦争当事者は国際法を顧みることなく軍事行動を続け、国際社会もこの構図を止めることができなかった。

ガザ戦争をきちんと終結させることができなかった「ツケ」が、いま国際社会に回ってきている。ガザで止められなかった戦争が、いま別の場所で繰り返されており、外交的努力や国際法、国際的枠組みが十分に機能しないまま軍事行動が開始され、都市インフラや住宅地への攻撃が続き、病院や学校を含む民間施設も被害を受けている。

もしこのまま国際法や国際人道法が尊重されない状態が続けば、その影響は戦場にとどまらず、社会の基盤となるインフラは破壊され、人々の生活は急速に不安定化し、紛争は周辺地域へと拡大する危険が高まる。

日本の独自の立場と国際協力への呼びかけ

日本にできることは決して大きいとは言えないが、米国の同盟国として緊密な関係を持つ一方で、人間の安全保障や人道支援を重視する国として、多くの開発途上国から信頼を得てきた。この立場は、日本に独自の役割を与えており、外交と国際協力を通じて、国際法や国際人道法を支持する国々と連携し、その原則を守る努力を粘り強く続けていく必要がある。

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ガザとイランの戦争が示しているのは、国際法が守られなければ戦争は容易に拡大し、社会そのものが破壊されるという現実である。平和は決して自然に維持されるものではなく、国際法や国際人道法、そして外交を尊重し続ける国際社会の努力によってのみ支えられている。遠回りに見えるかもしれないが、こうした努力を粘り強く続けることこそが、平和を守る唯一の道なのである。