トランプ政権のイラン攻撃、「差し迫った脅威」主張に法的根拠の乏しさが批判の的
【ワシントン=阿部真司】米軍によるイランへの攻撃をめぐり、トランプ米政権が「差し迫った脅威」を理由に正当化する一方で、法的根拠が乏しいとの批判が高まっている。トランプ大統領の国際法軽視の姿勢が改めて鮮明となる中、攻撃の正当性を疑問視する声が国内外で広がっている。
国連憲章と自衛権の解釈を巡る論争
国連憲章は原則として武力行使を禁じているが、例外的に、武力攻撃を受けた場合の自衛権の行使を認めている。差し迫った脅威があれば一定の条件下で、攻撃を受ける前に自衛権を行使できるとされる。トランプ氏は2月28日の演説で「イランの差し迫った脅威を排除し、米国民を守る」と述べ、攻撃を正当化した。
しかし、米政府高官が同日、記者団に対し「先制的な防御行動で米軍の被害を回避できると判断した」と説明したものの、政権は差し迫った脅威が実際に存在したという明確な根拠を示せていない。この点が、攻撃の合法性を揺るがす大きな課題となっている。
専門家やメディアからの批判的な見方
米紙ニューヨーク・タイムズは「差し迫った脅威はなかった」と報じ、攻撃の狙いについて「トランプ氏は弱体化したイランを窮地に追い込むチャンスを見いだした」と指摘した。さらに、欧州外交問題評議会の専門家は、トランプ氏の手法を「ロシアのウクライナ侵略と同じで、国連憲章に反している」との見方を示し、国際法軽視の姿勢を強く批判している。
この攻撃に先立ち、ルビオ国務長官は共和、民主両党の幹部数人に事前通告したが、議会の承認は求めなかった。これに対し、民主党のハキーム・ジェフリーズ下院院内総務は声明で「中東の泥沼化を回避する計画を今すぐ国民と議会に示すべきだ」と批判し、透明性の欠如を問題視している。
過去の事例との比較と国際的な懸念
今年1月の南米ベネズエラへの攻撃では、政権は麻薬密輸の罪に問われた反米左派ニコラス・マドゥロ大統領の刑事手続きを進める法執行の一環だと説明した。力で相手をねじ伏せるトランプ氏の手法は、一貫して国際法の枠組みを無視する傾向にあると見られている。
攻撃が長引けば米軍の被害が大きくなることへの懸念も根強く、中東情勢の不安定化を招くリスクが指摘されている。国際社会では、トランプ政権の行動が国際法秩序を損なう可能性について、警戒感が高まっている。



