愛知県名古屋市で活動する国際協力団体「日本国際飢餓対策機構」、通称ハンガーゼロの愛知事務所で海外事業部長を務める浅野陽子さんは、プライベートも含めてこれまで29カ国を訪問してきました。飢餓や貧困のない世界を目指して発展途上国を巡る中で、特に印象に残ったという西アフリカのガンビア料理を味わいながら、活動の原点について語ってくれました。
ガンビアの家庭料理を提供する店
名古屋市西区にあるガンビア料理店「ジョロフキッチン」。ガンビアから来日して35年になるガンビア名誉総領事のビントゥ・クジャビ・ジャロウさんが約5年前に開店し、家庭の味を伝えています。店名の「ジョロフ」は、現地のウォロフ語で「故郷」を意味します。
取材当日は、浅野さんがフィリピン出張を控えて多忙だったため、私がテイクアウトで注文し、市内の待ち合わせ場所に向かいました。
チキンアフラとジョロフライスの味
持参した料理の一つは、スパイスに漬け込んで焼いた鶏肉がメインの「チキンアフラ」です。「国際会議のために初めてガンビアに行った時に食べて、すごくおいしかった」と浅野さんは振り返ります。現地では屋台料理として親しまれ、店によってレシピが大きく異なるそうです。口に運ぶと、「ガンビアで食べたチキンアフラは肉が揚げてありましたが、これもおいしい」と笑顔を見せました。
トマト風味の米料理「ジョロフライス」は「ベナチン」とも呼ばれ、一つの鍋で作るチキンやトマトの炊き込みご飯のような一品です。素材のうまみがしっかりと感じられます。
国際協力への原点
浅野さんが国際協力の道に踏み出したきっかけは、約20年前のペルーでの経験でした。日本に向けてはがき3枚を送ろうとしたところ、現地で知り合った友人に「その切手代は1週間の食費と同額だ」と言われたのです。国によって大きく異なる金銭感覚、うらやましがられることへの困惑や後ろめたさを感じた浅野さんは、帰国後、世界の経済格差や貧困の現状に対して「このままではいけないのではないか」と問題意識を強く持ちました。そこで、非政府組織(NGO)の次世代スタッフを育成する連続講座に応募。ハンガーゼロでのインターンを経験し、10年前に同機構の職員となりました。
現地の人々と共に歩む支援
主な仕事は、日本からメールでやりとりしたり、現地視察で訪れたりしながら、世界各地の途上国の個人や団体と協力し、各地域の実情に合わせて貧困や飢餓をなくすための環境を整えることです。例えば、農業振興にはその土地に適した作物を吟味し、若者が希望を持てるようにサッカーチームづくりを進めることもあります。学校教育では労働環境を考慮し、校舎や教員用宿舎を建設したケースもあります。
浅野さんが大切にしているのは「現地の人たちの手で」という思いです。一方的な支援ではなく、教育改革や産業の発展に向けて地域住民が当事者として取り組み、それに伴走するスタイルを貫いています。
違いを楽しむ姿勢
外国で信頼関係を築くコツを尋ねると、「構えないこと。違うことは素晴らしいことだから。自分にも学びがある」と笑顔で答えます。違いがあるのは食文化も同じ。世界各地の料理には、それぞれの地域の歴史や食材、受け継いできた人々の思いが詰まっています。チキンアフラのスパイシーな香りが、浅野さんの言葉の説得力を一層高めているようで、思わず深くうなずきました。
ジョロフキッチンは、名古屋市西区中小田井5の16にあり、営業時間は午前11時半から午後10時まで、月曜定休です。問い合わせは電話090(1725)1294まで。



