インドネシアで連日続く酷暑の中、食欲をそそる伝統メニューがある。それが「ガドガド」だ。ゆでた野菜にピーナツソースをかけたサラダで、濃厚な味わいが特徴。さらに、現地の調味料「サンバル」を加えると、辛みがアクセントとなり、一層食欲をかき立てる。
老舗「ガドガド チェマラ」のこだわり
首都ジャカルタに4店舗を構える「ガドガド チェマラ」は、1947年創業の老舗。オフィス街のセティアブディ店を昼時に訪れると、多くの客で賑わっていた。店主のダニエル・スリヤディさん(46)は、「インドネシア独立の2年後から店を続けていることに興味を持ち、来店する人も多い」と笑顔で語る。
味も確かな評判を得ている。注文したのは、ちまきの一種「ロントン」入りのガドガド。濃厚なピーナツソースとホウレンソウやもやしを一緒に頬張ると、香ばしい甘さが広がり、野菜とよく調和する。テーブルのサンバルをたらせば、辛みが加わり、さらに食が進む。値段は4万8000ルピア(約430円)。ロントンの食べ応えもあり、ランチには一品で十分満足できる。
こだわりは野菜の新鮮さと食感だ。「ゆでた野菜に冷水スプレーをかけ、シャキシャキ感を残している」とダニエルさん。常連客の男性(70)は「この店の味が好きで、月に1回は来るよ」と話す。
家族の歴史と人を大切にする経営
店はダニエルさんの祖母が始めた。移転を繰り返し、経営は祖母から両親、そしてダニエルさんへと引き継がれた。コロナ禍で売り上げがゼロになり、閉店も考えたが、40年以上働く従業員や常連客の顔を思い浮かべ、踏みとどまった。「人こそが財産」という思いを胸に、もっと愛される店づくりに励んでいる。
サンバル:インドネシア料理に欠かせない辛み
辛みのアクセントとなる「サンバル」は、インドネシア料理には欠かせない調味料。唐辛子をベースにエシャロットやライムなどが加えられ、地域ごとに作り方が異なる。地元紙コンパスによると、国内のサンバルは300種類以上あるという。
ジャカルタの台所:クラマト・ジャティ中央卸売市場
首都ジャカルタの食を支える「台所」の一つが、クラマト・ジャティ中央卸売市場だ。首都東部にあり、新鮮な野菜や果物を求めて料理人や露天商、主婦らが各地から集まる。ガドガドを提供する店で使われる多くの野菜もここで仕入れられている。
敷地面積はジャカルタ最大の約14.7ヘクタールで、1600以上の卸売業者が出入りする。市場内は迷路のようで、ジャガイモやタマネギの袋が高く積まれ、大きな籠を担いだ人々が狭い通路を行き交う。青果物の種類も豊富で、日本ではあまり見かけない緑色のナスや太いキュウリ、パパイアやドラゴンフルーツなどの南国の果物が並ぶ。近くに住む60歳代の主婦は「家族の食事を作るため、毎日通っている」と話す。
旬の青果物はジャワ島全土から集まる。市場のマネジャー、アグス・ラムンさん(51)は「ここはジャカルタの食の需要を満たす供給源だ」と語る。



