米国でEV需要が回復基調、ガソリン高騰で維持費の安さが再評価される
米国の対イラン軍事作戦に伴うガソリン価格の高騰を受け、米国内で電気自動車(EV)の需要が持ち直している。中国勢が先行するEVを嫌うトランプ政権の優遇策廃止で販売が落ち込んだが、「維持費が安く済む」という点が改めて注目され、消費者からの関心が高まっている。一方、戦闘終結に向けた協議がヤマ場を迎える中、今後のガソリン価格の推移は流動的で、需要の回復基調が継続するかは不透明な状況だ。
ガソリン代の負担増でEVへの関心が高まる
「来店客はみんなガソリン代の負担を気にしている」と、ワシントン近郊にある米EV大手「テスラ」販売店の従業員は語る。同店は、最大7500ドル(約119万円)のEV購入補助金が昨年9月末に打ち切られ、客離れに直面したが、現在はガソリン代と比べて充電コストが大幅に安い点をアピールして営業攻勢をかけている。
テスラの急速充電設備は20~30ドル程度で約500キロの走行が可能とされ、店頭の車両には「5年間で5500ドルの燃料費を節約できる」との説明書きが貼られている。従業員は「今のガソリン価格なら訴求効果はさらに大きい」と自信を示しており、来店客の増加が報告されている。
ガソリン価格の急騰が家計や事業者を圧迫
イラン攻撃開始時に1ガロン(約3.78リットル)当たり2.9ドルだった米国内のガソリン平均価格は、17日時点で約4ドルに上昇。長引くインフレに拍車をかけ、家計や事業者を圧迫している。
ワシントンの配車サービスの男性運転手は「ガソリン代がかさみ、もうけが減っている」と説明。5カ月前に営業用のガソリン車を購入したといい、「補助金がなくても、長い距離を走ればEVの方が得をする可能性がある。EVを買うべきだった」と漏らした。
米調査会社コックス・オートモーティブによると、3月の米国のEV新車販売台数は前年同月を下回ったものの、前月比で20%増加。中古車は5割以上伸び、インターネットの「EV」の検索数も2割増えたとのデータがある。
ホルムズ海峡情勢の流動性で原油相場に不透明感
一方、ガソリン高を招いたホルムズ海峡の情勢は刻一刻と変化している。17日にはイランが停戦期間中の暫定措置として海峡の開放を表明し、原油価格は大幅に下落した。原油相場の先行きには不透明感が漂い、EV需要の回復が持続するかは予測が難しい。
EVは、価格競争力や充電の利便性の課題も抱える。欧州や東南アジアでも足元のEV需要は旺盛になっているが、米ブルームバーグ通信は「勢いを維持できるかを判断するのは時期尚早だ」と指摘している。
自動車各社の戦略判断が難しさを増す
世界のエネルギー事情の不安定化で、自動車各社の戦略判断は難しさを増している。米大手のフォード・モーターとゼネラル・モーターズ(GM)やホンダは、これまでの米市場の減速を受け、EV投資の中止と縮小による損失計上を公表したばかり。政治的要因で揺れ動く市場の不確実性が、経営リスクになっている。
ガソリン価格の変動がEV需要に与える影響は大きく、今後の推移次第では、回復基調が続くかどうかが左右される。消費者や企業は、燃料費の節約を求めてEVへの関心を高めているが、市場環境の変化には注意が必要だ。



