六本木「第2ヒルズ」計画の現在地 再開発に揺れる街の期待と不安
東京・港区六本木で、六本木ヒルズに匹敵する巨大再開発計画「第2六本木ヒルズ」が進められている。通称「第2ヒルズ」と呼ばれるこのプロジェクトは、地域の変貌を象徴するものとして注目を集めているが、その進捗には遅れが生じている。当初2025年度の着工が予定されていたが、現在も具体的な動きは見られず、関係者間では複雑な交渉が続いている状況だ。
街に残る懐かしい風景と迫る変化
再開発エリアは六本木交差点を起点に南側に広がっており、外苑東通り沿いには依然として古き良き六本木の面影が残っている。老舗洋菓子店「アマンド六本木店」や1892年創業の花店「ゴトウフローリスト」、夜の街を彩るバーやキャバクラなどが健在だ。しかし、通り沿いのビルオーナーからは「ビルも老朽化している。早く再開発を進めてほしい」という切実な声も聞かれる。
特に注目されるのが、1973年開業のロアビル(六本木共同ビル)だ。かつては最上階のディスコ「ボビー&マギー」や「ザ・リージェンシー」に若者が詰めかけ、若者文化の発信地として一世を風靡した。しかし現在はシャッターが下り、「立入禁止」の表示が掲げられ、周囲は金属製の囲いで覆われている。倒壊の危険性から解体が決定しており、かつての活気ある面影は完全に失われている。
地権者との交渉が続く複雑な事情
外苑東通り沿いの商業ビルでは、現在も8棟の地権者が再開発を巡る交渉を続けている。ある地権者企業の役員は「六本木は大小の企業や飲食店・小売店が集積して独自の活気ある繁華街を築いてきた。同じような再開発が続けば、街の個性が失われてしまう」と懸念を表明。再開発からの除外を求めているという。
この地域には長年愛されてきた店舗も多い。1992年創業の居酒屋「魚洋水産」では、故アントニオ猪木さんをはじめ多くの著名人が常連として訪れていた。女将の大場メリさん(78)は「このビルはオーナーが売却したが、私たちは出て行きたくない」と心情を明かす。「若い子たちが『母ちゃん、母ちゃん』と呼びに来てくれる。こういう手作りの店が大切なんじゃないか。ヒルズじゃこんな値段では飲めないでしょう」と、地域に根差した店舗の価値を強調する。
新たな夢を描く移転者たち
一方で、再開発を機に新たな場所で夢を追う人々もいる。世田谷・下北沢の再開発に伴い、昨年9月に六本木へ移転してきた飲食店の40代店長は「麻布十番や白金など港区の住宅街で店を出すのが夢。立ち退きがいつになるか分からないが、活気がある街なのでここで資金を蓄えたい」と語る。移り変わりの激しい六本木は、新たなチャンスを求める人々にとっても夢を描く場所となっているようだ。
計画の遅れと今後の見通し
再開発を手がけるデベロッパー「森ビル」に進捗を尋ねると、「着工はまだ」との回答があった。建築費の高騰や職人不足の影響などにより、当初予定していた2030年度の竣工は遅れる見込みだという。
六本木五丁目西地区の再開発計画では、森ビルや住友不動産などが、327メートルの超高層棟と288メートルのタワーマンションなどを建設。オフィスやホテル、展望施設を備え、六本木駅と再開発地区を地上・地下の通路で結び、災害時の一時滞在場所にもなる大規模広場を整備する予定だ。2024年4月に都市計画が決定され、現在は事業認可と再開発組合設立に向けた準備が進められている。
歴史ある店舗と新たな商業施設、地権者と開発業者、伝統と革新——六本木の街では、巨大再開発を前にさまざまな思惑が交錯している。街の変貌は確実に進んでいるが、その過程では地域のアイデンティティをどう守り、発展させていくかという難しい課題が横たわっている。



