最近、AI(人工知能)の話題を耳にしない日はない。友人との会話でも「チャッピー(対話型AIサービスのチャットGPT)が教えてくれたんだけどさ」と返ってくる。AIは文章や画像を迅速に作成し、悩み相談の相手にもなる。AIの普及に伴い、快適さや便利さが増しているのは間違いない。しかし、「もっと効率的な方法は?」「それって生産性あるの?」と常に問われている気さえする。そんな時代の中で、自分にできることは何だろうと考えずにはいられない。
半世紀以上星を追い続けるアマチュア天文家
4月の晴れた朝、松江市のアマチュア天文家、金津和義さん(72)の自宅を訪ねた。金津さんの部屋に入ると、壁には大きな星図が貼られ、棚には膨大な観測記録のファイルや天文雑誌が整然と並んでいる。パソコンの前に座り、専用ソフトを慣れた手つきで操作しながら「これはね」と少年のような表情で説明してくれる。その横顔を見ていると、本当に星が好きなのだと胸が温かくなった。
原点は小学6年生の頃
金津さんの天文人生の原点は、小学6年生の頃にさかのぼる。松江市役所旧庁舎の屋上にあった市立天文台で見た土星の輪に衝撃を受けた。「宇宙にこんなものがあるのか」。その驚きが人生を決めた。以来、半世紀以上、星を追い続けてきた。三つの新星を発見し、研究者が注目する特異天体、通称「金津天体」の名も残した。
天体観測は「気まぐれ」な作業
天体観測は「気まぐれ」だと金津さんは言う。晴れた空を待ち、月明かりを避け、場所によっては電線などの遮蔽物を避けて夜空を狙う。決して楽な作業ではない。それでも金津さんが日々観測を重ねてきたのは、その不便ささえも楽しんでいるからだろう。
AIに先を越されても
金津さんにふとAIについて聞いてみた。今後、巨大望遠鏡とAIが全自動で空を監視するようになれば、アマチュアが未知の天体を発見する時代は終わるかもしれない、と金津さんは語った。しかし、その口調に悲観はなかった。「それでも私は観測を続けます。AIに先を越されたとしても、自分が知らない星を見つけた時の感動は格別ですから。そこにロマンがあるんです」。なるほど、と思った。
金津さんはきっと、バルコニーで空を見上げている。効率や正解だけにとらわれない、自分だけのロマンを求めて。そんな人々の生き方を、AIが興隆する今だからこそ、伝えていきたい。



