身近な数学の世界:数の面白さと社会応用を中央大教授が解説
身近な数学の世界:数の面白さと社会応用

中央大学基幹理工学部の渡邉究教授は2026年5月27日、中央大学と読売調査研究機構が共催したオンラインセミナーで「身近にある数学の世界~「数」の面白さと社会への応用~」と題して講演した。渡邉教授は数学の魅力や日常生活を支える数学の仕組みを平易に解説し、後半のトークセッションでは自身が数学に本気で興味を持ったのは高校からだったという体験を詳しく語った。

日常生活に隠れる数学

渡邉教授はまず、日常生活に潜む数学の例を挙げた。数字を使わない日はなく、りんごを2個買う、ライブ配信が19時開始といった場面で数字が登場する。勉強では足し算、引き算、掛け算、割り算、分数と扱う数が増え、図形も学ぶ。図形は商品やデザインの至る所に使われ、三角形の特性を活かした橋もある。算数で学ぶことは当たり前に生活に溶け込んでいる。

一方、専門家でなければ仕組みが見えにくい数学の応用例として、GPSの位置情報、顔認証システム、コンサートホールの音響設計などを紹介。数学は自然科学を記述する言語であり、科学的な分析には数や式が不可欠であるため、数学はあらゆる分野で使われていると述べた。

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感覚と現実の乖離:指数関数的増加

数学を用いて感覚と実際の乖離を示す例として、新聞紙を半分に折り続ける問題を提示。1枚の厚さを0.1ミリと仮定し、n回折った厚さは0.1×(2のn乗)ミリとなる。10回で10.2センチ、20回で105メートル、25回で3355メートル(富士山8合目相当)、30回で成層圏超え、39回で地球一周超え、42回で月までの距離を超える。最初はゆっくり増えるが後半で急増するこの現象は指数関数的増加と呼ばれ、感覚と現実の違いを示す好例だ。

宝くじの確率と6次の隔たり

宝くじの確率について、年末ジャンボ宝くじでは1ロット2000万枚、1等の確率は2000万分の1、前後賞は1000万分の1、5等1万円でも1000分の1と現実は厳しい。しかし、当選を夢見る楽しみや震災復興財源への貢献を考えれば、楽しみながら社会貢献できると述べた。

また、「6次の隔たり」という概念を紹介。これは6人ほどの知人をたどれば世界中の誰とでもつながれるという仮説で、50人の知人を重複なく紹介してもらう計算では、50の6乗で約156億人となり世界人口を超える。重複がなければ理論上は成り立つ。

余りと素数が守る生活

数学が実社会で役立つ例として、「余り」と「素数」が生活を支えていると説明。時計の数学では、12時間周期で元に戻る性質を利用し、100時間後が何時かは100÷12の余り4で5時と計算できる。同様に曜日計算も可能だ。

素数は「1と自分自身でしか割り切れない2以上の整数」で、すべての2以上の整数は素数の積で表せる(素因数分解)。この性質と時計の数学(合同式)を組み合わせて暗号が作られている。現代の暗号の一つRSA暗号は、約300桁の素数2つの積(約600桁)を用い、素因数分解の困難さに安全性を依存している。将来の量子コンピューター登場に備え、新たな暗号方式の研究も進んでいる。

渡邉教授の経歴とメッセージ

渡邉教授は早稲田大学で博士号を取得後、早大と東大で研究員、埼玉大学助教を経て中央大学に着任。自身のYouTubeチャンネルで数学の授業動画を公開しており、大学数学科の雰囲気が分かると述べた。SNSでの発信がきっかけでKADOKAWAから『数字がわかれば世界がわかる! すごすぎる数の図鑑』を出版。算数が得意な小学5・6年生から大人までを対象に、中高数学や大学数学、未解決問題などをイラストで分かりやすく解説した。「数学をやって何になるのか」「何が楽しいのか」という質問に応え、数学が苦手だった大人にも読んでほしいと語った。

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