中央大学基幹理工学部の渡邉究教授は2026年5月27日、中央大学と読売調査研究機構が共催したオンラインセミナーで「身近にある数学の世界~「数」の面白さと社会への応用~」と題した講演とトークセッションを行いました。数学に限らず、好きなものを見つけるには様々なアプローチが重要だと述べ、AI時代における数学者の立ち位置についても自身の考えを語りました。聞き手は読売新聞東京本社調査研究本部の三井誠主任研究員です。
数学の苦手意識の理由
三井氏の「なぜ多くの人が数学に苦手意識を持つのか」という質問に対し、渡邉教授は複数の理由を挙げました。小学校の算数は指折り数えるなど生活感覚に近いが、分数や小数、さらにxやxの2乗などの抽象的な概念が登場すると理解が難しくなるといいます。また、数学は積み上げ式の学問であり、足し算から掛け算へと段階的に進むため、どこかでつまずくと先に進めなくなることが苦手意識の原因だと指摘しました。
数学への興味のきっかけ
渡邉教授自身の数学へのめり込みのきっかけは、高校2年生の時に数学の先生から「86点しか取れないのか」と言われ、「次は100点を取る」と宣言して勉強を始めたことでした。その後、「大学への数学」という雑誌で数学オリンピックの存在を知り、自分の知らない世界があると感じてさらにのめり込んでいったといいます。
苦手意識克服のためのアプローチ
苦手意識を克服するためには、人によって何が刺さるかわからないため、様々な種をまくことが大切だと渡邉教授は述べました。教科書の勉強だけでなく、数学の書籍を渡したり、科学館や数学館に連れて行ったりすることで、遊び半分から興味を持つ人もいるといいます。実際に、秋山仁先生が監修した数学体験館(東京理科大)や渋谷区立のこども科学センター・ハチラボなど、数学を体験できる施設が存在します。
数学研究の楽しさと社会貢献
渡邉教授は、大学院で初めて研究成果を上げた時に数学の道に進むことを確信したと語ります。研究は暗闇の中を探検するようなもので、人類史上初めて自分の定理を発見する瞬間は非常にエキサイティングだと述べました。また、基礎研究が社会の役に立つ例として、RSA暗号や楕円曲線暗号を挙げ、代数幾何学の理論が現代社会を支える暗号技術に応用されていると説明しました。
AI時代における数学の役割
AIの急速な進化について、渡邉教授は自身の研究でもAIを活用し始めており、最近では80年近く未解決だった数学の問題にAIが貢献したニュースに衝撃を受けたと語りました。自身の論文で解けなかったケースもAIの助けで解決できたといいます。ただし、AIは既存の手法を組み合わせることはできても、真に新しいアイデアを出すのは人間の役割であり、何を研究するかというアジェンダ設定には人間の創造力が重要だと強調しました。
数学を身近に感じる秘訣
最後に、数学を身近に感じるためのコツとして、渡邉教授は「とにかく色々な方法を試してみること」と述べました。自身の経験から、やる気になるためには何かに触れるきっかけが必要であり、数学に限らず様々なものに触れることが大切だと語りました。



