京都大学は9日、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した心筋シートを重症心不全患者に移植する臨床研究を開始すると発表した。第1例目の手術は今月中に実施される見通しで、再生医療の実用化に向けた大きな一歩となる。
臨床研究の概要
研究チームは、他人のiPS細胞から心筋細胞を分化誘導し、シート状に加工。これを患者の心臓表面に移植することで、心機能の回復を図る。対象は、薬物治療や人工心臓など既存の治療法では効果が不十分な重症心不全患者で、計3例を予定。
安全性と有効性の検証
主な目的は安全性の確認だが、心臓のポンプ機能や運動耐容能の改善効果も評価する。移植後1年間は経過観察を行い、拒絶反応や腫瘍形成の有無などを慎重に調査する。
再生医療の実用化へ前進
iPS細胞を用いた心筋再生の臨床応用は国内初。これまで動物実験で有効性が示されており、今回の研究で安全性が確認されれば、重症心不全患者の新たな治療選択肢となる可能性がある。
研究の背景
心不全は心臓のポンプ機能が低下する病気で、患者数は増加傾向にある。重症例では心臓移植が唯一の根本的治療法だが、ドナー不足が深刻な課題。iPS細胞による心筋シートは、拒絶反応のリスクが低く、大量生産も可能なため、多くの患者への提供が期待される。
研究代表者の京都大学iPS細胞研究所(CiRA)の教授は「今回の臨床研究は、iPS細胞技術の医療応用における重要なマイルストーン。安全で効果的な治療法の確立を目指す」とコメントしている。



