ヒトゲノム(人間の全遺伝情報)の解読に大きく貢献した米国の分子生物学者で実業家のクレイグ・ベンターさんが29日、死去した。79歳だった。自身が創設した研究機関が発表した。がんの治療を受けていたという。
ヒトゲノム解読競争を牽引
ベンターさんは米国立衛生研究所(NIH)で働いた後、1998年にセレラ・ゲノミクス社を設立し、ヒトゲノムの解読に挑んだ。当時は日米欧などの国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」が進行中だったが、ベンターさんはショットガン法と呼ばれる独自手法で競争を仕掛け、解読のスピードを大幅に加速させた。
2000年には、セレラ社とヒトゲノム計画がほぼ同時に解読完了を発表。当時のクリントン米大統領が共同で成功を宣言し、遺伝病の解明や新薬開発への道を開いた。
人工細菌の作製と倫理議論
2010年には、細菌のゲノムをもとに人工的に合成したDNAを使い、自己増殖する「人工細菌」の作製に成功。これは合成生物学の画期的な成果として注目されたが、同時に安全性や倫理面での議論を喚起した。ベンターさんはこれらの技術を医薬品生産などに応用する可能性を提示していた。
ベンターさんの死去は、生命科学分野における大きな損失とみられている。彼の業績は遺伝子研究の未来に永続的な影響を与えるだろう。



