国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで、絶滅の危険性が最も高い「近絶滅種」に指定されているオランウータンが、生後6年半まで母乳を飲んで成長することが、九州大などの研究で明らかになった。哺乳類の中で最長の授乳期間であり、この発見は高い生存率の解明につながり、飼育環境の向上への貢献も期待されている。論文は英科学誌「コミュニケーションズ・バイオロジー」に掲載された。
研究の詳細
九州大学の蔦谷匠准教授(自然人類学)によると、オランウータンの出産間隔は平均7~8年で、哺乳類の中で最も長い。子の生存率は9割以上で、先進国の人間並みの高さを誇る。少ない子を大切に育てることで知られるが、これまで授乳期間ははっきりしていなかった。
研究チームは九州大学、金沢大学、マレーシア・サバ大学などで構成され、マレーシア・ボルネオ島に生息する10頭のボルネオオランウータンから、2年半以上にわたって糞27個を採取。含まれるたんぱく質を分析した結果、6歳半までの個体の糞からは母乳由来の成分が検出されたが、7歳以上では見つからなかった。これにより、授乳期間はチンパンジー(生後4~5年)やゴリラ(同3~4年)などを大幅に上回ることが確認された。
母乳の重要性
母乳には、体内に侵入したウイルスや細菌を攻撃するたんぱく質、腸内環境を整えるオリゴ糖などが豊富に含まれている。蔦谷准教授は「長い授乳期間が免疫力や腸内環境を向上させ、栄養の乏しい環境でも極めて高い生存率を保っていると考えられる」と指摘。さらに「アニマルウェルフェア(動物福祉)の観点から、動物園で展示される個体のより良い飼育環境の実現などにも役立てられるのではないか」と述べた。
国内の飼育状況
大型類人猿情報ネットワーク(事務局・京都大学野生動物研究センター)によると、国内では現在、多摩動物公園(東京)や福岡市動物園(福岡)など16施設で計36頭が飼育されている。今回の研究成果は、飼育下での繁殖や育児環境の改善に役立つと期待される。



