心臓回復を促す五つの遺伝子を発見
大阪大学の研究チームは、心筋梗塞(こうそく)によって弱った心臓の機能を回復させる五つの遺伝子を特定したと発表した。これらの遺伝子を、たんぱく質の設計図となる遺伝物質「メッセンジャーRNA(mRNA)」として、心不全状態のマウスに投与したところ、心機能が改善し、生存率が大幅に向上した。この成果は、心筋梗塞後の心不全に対する新たな治療法の開発につながる可能性がある。
研究の背景と手法
心筋梗塞は、心臓の血管が詰まることで発症し、心不全に進行すると炎症や血流低下など複合的な異常が生じ、命に関わる。チームは、iPS細胞から作製した心筋細胞が分泌する粒子に着目し、マウス実験を通じて五つの遺伝子を特定した。これらの遺伝子の情報をコピーしたmRNAを作成し、心不全マウスの心臓に直接注射したところ、新たな血管の形成などが観察された。
mRNA投与の効果
投与後250日目の生存率は、未投与のマウスと比較して約60%高いことが確認された。mRNAは投与部位で炎症を起こしやすいため、チームは超小型カプセルを開発し、これにmRNAを封入することで炎症を抑え、効率的に心臓へ届けることに成功した。研究成果は国際科学誌に掲載されている。
専門家の見解
研究を率いた位高啓史・阪大教授(mRNA創薬)は、「心筋梗塞後の心不全治療に新しい可能性を示せた。他の疾患治療への応用も期待できる」と述べている。東北大学の秋田英万教授(薬剤学)は、「心不全で弱った心筋を再生・修復する治療薬はまだなく、mRNA技術を応用する点に意義がある。5種類のmRNAを心臓に直接届ける手法も新規性があり興味深い」とコメントした。



