日本人研究者の多くが苦手とする英語論文の執筆を支援する人工知能(AI)の採用が、国内の大学で相次いでいる。京都大学も2026年5月、約5000人に上る全研究者を対象に導入を開始した。これまで論文作成に時間がかかり、国際競争の足かせとなってきたが、AIの積極活用で競争力向上を図る動きが加速している。
導入の背景とAIの機能
京大が導入を決めたのは、125か国以上の研究者約400万人が利用する論文執筆支援AI「Paperpal(ペーパーパル)」だ。2002年にインドで創業した研究支援サービス会社「カクタス・コミュニケーションズ」が開発し、国内では2023年3月にサービスが開始された。
このAIは、日本語での研究アイデアや論文の草稿を翻訳し、英文の校正や適切な表現の提案などを通じて、より学術的な英語論文の作成を支援する。商用利用の承諾が得られている論文データベースを基に学習しており、インターネット上の真偽不明な情報から文章を生成する懸念を排除している。また、他の論文からの盗用を防ぐチェック機能も備えている。
導入状況と効果
同社の日本法人によると、立命館大学や宇都宮大学、信州大学、長崎大学、熊本大学など約40の大学・研究機関が一部の研究者向けに法人契約を結んでいる。所属する研究者全員を対象に契約したのは京大が初めてだという。
日本人を含め、英語を母語としない若手研究者は、論文を書く時間が英語圏の人の1.5倍かかっているとされる。AIの導入により、実験などの研究時間が増える効果も期待されている。
京大医学研究科の30歳代の助教は、「英語には苦手意識があったが、AIが様々な提案をしてくれることで負担が減った。発表前の論文を教授に見てもらう際も、英語の指導ではなく研究内容に関する議論に時間を割けるようになった」と語る。
今後の展望
論文の出版社側はAI使用を論文に明示するよう求めており、京大は学内セミナーを開いて周知したという。また、AIによって研究がどの程度効率化されたのかを調べる共同研究も進めている。
京大総合研究推進本部の納谷憲幸リサーチ・アドミニストレーターは、「AI技術は急速に進歩している。研究者自身が論文の内容に責任を負うことを前提に、適切に活用して研究の加速につなげたい」としている。



