人工知能(AI)技術を悪用した音声偽装による詐欺被害が、全国で急増していることが、警察庁のまとめで明らかになった。2025年の上半期だけで、前年同期比で約3倍となる被害額を記録し、社会問題化している。
巧妙化する手口
被害者の家族や知人、企業の上司などを装い、AIで生成した声を使って電話をかけ、金銭をだまし取る手口が相次いで確認されている。従来の録音音声とは異なり、リアルタイムで自然な会話が可能なため、被害者は疑いを持ちにくいという。
警察庁の担当者は「声のトーンや話し方まで本人そっくりに再現できるため、電話口で『おかしい』と感じることは難しい。今後さらに技術が進歩すれば、より高度な詐欺が出現する恐れがある」と警鐘を鳴らす。
被害実態と対策
被害は個人だけでなく、企業も標的になっている。ある大手企業では、AI音声で社長になりすまされ、緊急の取引名目で数千万円を振り込んでしまう事案が発生した。被害総額は昨年の同時期と比べて約3倍に膨らんでおり、高額化の傾向も見られる。
こうした事態を受け、政府は対策を強化する方針を固めた。具体的には、金融機関と連携した高額送金時の本人確認強化や、AI音声を検出する技術の開発促進などが検討されている。また、国民向けに注意喚起を徹底し、電話での金銭要求には必ず別の手段で確認するよう呼びかける。
専門家は「AI技術の進歩は便利だが、悪用されれば甚大な被害をもたらす。技術的な対策と同時に、利用者側のリテラシー向上が不可欠だ」と指摘している。



