日村は阿岐本に尋ねた。
「何を見てらしたのですか?」
「ん? 言っただろう。店の様子だ」
「そうですか」
「おめえも見てただろう?」
「はあ……。ちらちらと……」
「どう思った?」
「ほとんど、客が来ませんでしたね。あれじゃあ、昇さんが何とかしようと考えるのも無理はありません」
「たしかに、あんまりお客の姿はなかったな……」
「でも、立地はいいですよね。通りに面した角地です」
「そうだな」
「再開発のこと、昇さんに尋ねていましたよね」
「ああ」
「そういう情報があるんですか?」
「そうじゃねえよ」
「じゃあ、どうして……」
「永神だよ」
「オジキですか」
「あいつが損得抜きに、誰かの相談に乗るなんて思えねえ」
「はあ……」
「だから、何か利権が絡むからくりがあるんじゃねえかと考えたんだが……」
「でも、再開発などの話はないと……」
「何か考えてやがるに違いねえ」
日村は何も言わないことにした。オヤジとオジキの話に自分ごときがコメントしてはならないと思ったのだ。
だが、阿岐本の言うことはもっともだと思った。永神は決して悪人ではないが、いっぱしのヤクザだから、決して油断はならない。



