ホラーゲームの聖地となった下呂市「筋骨エリア」を英語ガイドが案内
岐阜県下呂市金山地区に広がる「筋骨エリア」が、国内外から注目を集めている。この地域には、人間の筋や骨に例えられるほど狭く絡み合った路地が迷路のように広がり、昭和の風景が色濃く残されている。昨年9月に発売された人気ホラーゲーム「サイレントヒルf」の舞台モデルとなったことで、ゲームファンが「聖地」として訪れるようになったのだ。
昭和の面影が残る独特の街並み
筋骨エリアは、江戸時代の宿場町として栄え、1970年前後にはダム建設でにぎわった金山町の旧飛騨街道周辺に位置する。生活に密着した幅70センチから1メートルほどの共同通路が特徴で、表通りから一段低くなった水路沿いには密集した古い住宅が立ち並ぶ。地下水を利用した水場なども残り、異世界のような雰囲気を醸し出している。
ゲーム発売後、「筋骨めぐり」を楽しむ人は約2倍に増加。若者や外国人の姿も目立つようになり、地域に新たな活気をもたらしている。
地元出身の英語ガイドがデビュー
この状況を受け、地元出身の進藤みくさん(37)が英語専門ガイドとして活躍を始めた。金山町で生まれ育ち、愛知県内の短期大学で保育を学んだ進藤さんは、米国での日本語指導員経験や高山市のゲストハウス勤務を経て、2021年に地元に戻った。
「英語のスキルを生かすというよりも、英語を学びながら外国の方と交流したい。金山で英語の仕事ができないか」という思いからガイドの道を志したという。
2024年夏からは、「筋骨めぐり」の発案者で3000回を超えるガイド実績を持つ岡戸孝明さん(77)に師事。何度もガイドに同行して内容をメモし、英語の台本作りに取り組んだ。そして昨年3月、念願の英語ガイドとしてデビューを果たした。
10か国から訪れるゲームファン
進藤さんがこれまでにガイドしたのは、アメリカ、イギリス、ドイツ、香港など10か国・地域からの13組、32人に上る。有名観光地から地方へと広がる訪日外国人観光客の流れが、ゲームをきっかけに金山地区にも及んでいる証左だ。
タイから訪れたゲームファンはカメラマンを雇い、主人公のコスプレをして熱心に撮影を繰り広げた。洗濯物が干してあったり、屋内の音が漏れ聞こえたりする生活空間そのものである筋骨エリアだが、「ガイドを付ける人たちは、とても丁寧で行儀がいい。ガイドがいれば、地元の人にも迷惑がかからない」と進藤さんは語る。
地域の魅力を世界に発信
ツアーでは、ゲームにちなんだラベルの日本酒を売り出す奥飛騨酒造での試飲なども組み込まれ、「こんなに楽しいツアーだとは思わなかった」という参加者の声が励みになっているという。
進藤さんは今後の展望について、「筋骨めぐりを地域で盛り上げていきたい。将来的には金山巨石群や四つの滝など、地域のほかの場所も英語で案内できたらいいな」と夢を膨らませている。
ホラーゲームをきっかけに注目を集める下呂市の筋骨エリア。昭和の風景が残る路地を、英語ガイドが丁寧に案内する新たな観光の形が、地域に根付きつつある。



