下関市が火の山公園再生に70億円投資、メガジップライン構想で観光活性化を目指す
山口県下関市は、関門海峡を望む「火の山公園」の再編整備事業を積極的に推進している。総事業費は70億円を超える見込みで、2027年度以降のグランドオープンを目指す。この取り組みは、年間約100万人が訪れた最盛期の人気回復を図り、市民にも親しまれる観光の主役として再生させることを目的としている。
歴史と自然を生かした公園再生計画
火の山公園は、標高268.2メートルの火の山の麓から山頂にかけて広がる122.5ヘクタールの広大なエリア。平安時代から狼煙場があったと伝わる歴史的な場所で、源平合戦の壇ノ浦の戦いや宮本武蔵と佐々木小次郎の決闘地である巌流島を一望できる。また、明治期に築かれた下関要塞の遺構が残り、桜やチューリップの名所としても知られ、「日本夜景遺産」に認定されている。
前田晋太郎市長は市議会で、「火の山の眺望と自然と歴史を最大限に生かし、にぎわいを高める」と強調。公園を「未来を育む観光資源」と位置づけ、再生事業を重点施策として推進する方針を示した。
新施設の整備と利用者数目標
再編整備事業は2023年3月に基本計画を策定し、2024年7月に工事に着手。第1弾として、2025年11月に山頂東側のアスレチックエリア(約5000平方メートル)が供用開始された。「空のブランコ」や「海のすべり台」など13種類の遊具と展望スポット3か所を設け、家族連れやカップルでにぎわっている。
2026年4月23日には、山頂西側に新しい屋外展望台「ヒノヤマリング」がオープン。二重のリング状デッキで夜間はライトアップされ、関門橋などの眺望を楽しめる。2027年度以降には、ロープウェーに代わる固定循環式移動施設「パルスゴンドラ」や屋内展望施設、芝生広場が整備される予定だ。
山麓では2026年6月下旬にキャンプ場が完成し、2027年度以降に山麓駅が設置される。立体駐車場も建設され、山頂分と合わせて約400台を収容する。
市は再編整備後の山頂の年間利用者数目標を、過去50年間の平均である37万人に設定。ゴンドラについては24万人の利用確保を目指している。
メガジップライン構想の再浮上
下関市は集客力向上のため、公園から北九州市門司区までの関門海峡上にワイヤを張り、滑り降りるアトラクション「メガジップライン」の構想を再検討している。以前は民間企業が提案し、国土交通省が高評価したものの、安全性や資金面の課題で頓挫した経緯がある。
前田市長は「火の山はもちろん、下関観光の目玉になる」と実現に意欲を示し、2026年度当初予算に調査費1000万円を計上。定例記者会見では、「市が主体となり、ゼロから道を切り開く」と説明し、実現可能となれば北九州市や県と連携して事業化を図る方針だ。
観光活性化への期待と課題
火の山公園の再生は、市民や観光客の利用増加を通じて下関観光を活性化する推進力となるかが焦点。魅力を広くPRするほか、イベント開催などのソフト面の工夫も必要だ。大規模改修を終えた海響館や新規開業したホテル・リゾナーレ下関など既存施設との連携も有効と見られている。
下関観光コンベンション協会の古川力専務理事は、「公園再生により観光客の滞在時間が延び、飲食業や宿泊業への波及効果が期待できる。メガジップラインは実現すれば国内外に強くアピールできる」と指摘。官民一体での施策展開の重要性を強調した。
火の山公園は、市民にとって「心の公園」として愛着を持たれる場所であり、観光客にも歴史と絶景を提供する魅力的なスポットだ。再生事業は観光振興だけでなく、市民の誇りを育む側面も持つ。新たな火の山公園がどのような復活劇を演じるか、メガジップライン構想の行方も含め、注目が集まっている。



