丸木美術館が大規模改修、2027年5月に再開へ
原爆投下直後の惨状を描いた「原爆の図」を展示する埼玉県東松山市の「原爆の図丸木美術館」で、大規模な改修工事が着々と進められています。1967年の開館以来、幾度かの増改築を経てきた同館ですが、今回は開館60周年を記念した大規模なリニューアルとなります。工事現場が公開され、その詳細が明らかになりました。
歴史を尊重した設計で新たな鑑賞空間を創出
今回の改修工事は、建築家の斎賀英二郎氏と八木香奈弥氏が設計を担当。2023年に改修計画が発表されて以来、準備が進められてきました。特徴的なのは、美術館の歴史を象徴する要素を最大限に尊重した設計です。特に、外壁に施された鳩のレリーフはそのまま残され、建物の記憶を未来へと引き継ぎます。
改修の主な柱は二つあります。まず、館内に腰掛けを設け、来館者が作品鑑賞の合間に休めるスペースを増やすこと。次に、小さな作品を落ち着いて鑑賞できる専用の展示エリアを新設することです。これにより、より深く作品と向き合える環境が整えられます。
丸木夫妻の作品と美術館の歴史を同時に体感
「原爆の図」は、画家の丸木位里氏(1901~1995年)と丸木俊氏(1912~2000年)の夫妻によって制作された連作です。1950年から32年間かけて描かれた全15部からなり、開館時には第1部「幽霊」から第11部「母子像」までが常設展示されていました。夫妻は美術館に隣接する母屋で生活しながら創作活動を続け、後に「水俣の図」など他の作品も加わり、展示内容が充実していきました。
美術館は度重なる増改築を経て、総床面積は開館当初の5倍に拡大。しかし、近年は建物の老朽化が目立つようになり、今回の大規模改修が必要となりました。斎賀氏は「これまで見えなかった展示室の屋根の形を見えるようにするなど、美術館の歴史をたどれる設計を工夫した」と説明しています。
基金を活用した約4億円の工事費で実現
改修工事の実現には、2017年に創設された改修及び絵画保存のための基金が大きな役割を果たしています。この基金などを財源として、約4億円の工事費が捻出されました。同館は昨年9月から改修のため休館しており、開館60周年にあたる2027年5月の再開を予定しています。
岡村幸宣専務理事は「改修後は、丸木夫妻の作品を鑑賞するだけでなく、美術館そのものの歴史も感じてほしい」と語っています。歴史的価値と現代的な機能性を融合させた新たな美術館の姿が、多くの来館者を待ち受けています。



