130年以上の歴史に幕 青森・五戸町唯一の書店「菊六書店」が閉店
青森県五戸町で唯一の書店であった「菊六書店」が3月29日をもって閉店し、130年以上にわたる長い歴史に幕を下ろした。人口約1万5000人の町で、学生から高齢者まで幅広い世代に親しまれてきたが、人口減少や電子書籍の利用拡大などにより客足が遠のき、苦渋の決断となった。町民たちは閉店を惜しみ、別れを告げに訪れている。
歴史と趣を感じさせる店舗 閉店セールに町民が集う
同町の中心部にたたずむ茶色い外観の店舗は、明治時代からの歴史を感じさせる佇まいだ。店内には「閉店セール」と書かれた黄色い紙が所々に貼られ、壁には「長い間ご愛顧いただきありがとうございました」の文字とともに、菊六書店の歩みを振り返る年表が掲示されている。閉店前日まで多くの町民が訪れ、最後の買い物や思い出話に花を咲かせた。
明治中期から続く歴史 地域の教育を支えてきた
菊六書店の歴史は古く、商店として営業を始めた明治中期の1892年の帳簿が現存する。大正時代には教科書の取り扱いを開始し、書店としての形態を整えていった。2013年には長年にわたり地域に教科書を供給してきた功績が認められ、文部科学大臣から表彰を受けた。かつては県立五戸高校の生徒たちが下校途中やバス待ちの時間に漫画や参考書を求めて立ち寄る、地域の文化的な拠点でもあった。
人口減少と電子書籍の普及が追い打ち
しかし、1990年に約2万2000人だった五戸町の人口は徐々に減少し、現在は1万5000人を下回っている。さらに、2022年には県立五戸高校が閉校となり、学生客の減少にも拍車がかかった。新型コロナウイルスの影響も大きく、感染が収まった後も客足は以前の半分以下にとどまったままだ。
社長の工藤応之さん(58)は「コロナ禍をきっかけに、電子書籍の利用や書籍のネット注文が増えたのかもしれない」と語り、時代の変化を実感している。
町民の声 「唯一の書店がなくなる寂しさ」
子どもの頃から菊六書店を利用してきたという同町の主婦、岩井夏子さん(74)は「料理本や旅行の本をいつもこのお店で買っていた。唯一の書店だったので、閉店と聞いてまさかと思った」と寂しそうに語った。多くの町民が同様の思いを抱き、地域から大切な文化施設が失われることへの寂しさを口にしている。
閉店後は文化活動の場として活用へ
閉店後の空き店舗については、絵本の読み聞かせやアート体験のワークショップなどを開催する文化活動の場として提供する予定だ。29日は午前8時半から午後4時まで最終営業を行い、多くの町民が最後の別れを告げに訪れた。
青森県内の無書店自治体は16に 全国平均を上回る
出版文化産業振興財団(東京)の調査によると、2025年8月時点で青森県内の無書店自治体は蓬田村や横浜町など16自治体に上る。これは県内全体の40.0%を占め、全国平均の28.6%を大きく上回っている。
町民の読書機会を確保しようと、無書店自治体の一つである深浦町では、住民が運営する「ふるさとブックオフ」が4月25日に開店する予定だ。中古書籍販売の「ブックオフコーポレーション」(相模原市)が町と連携し、文庫本など約4000冊を常時取りそろえる。本の買い取りは行わず、販売のみを行う全国で3例目の試みとなる。



