惣十郎浮世始末 巻之二 第271回 図面紛失の謎と吟味方の思惑
惣十郎浮世始末 図面紛失の謎と吟味方の思惑

惣十郎浮世始末 巻之二 第271回 図面紛失の謎と吟味方の思惑

弓浜宗佑にもお粂にも、今一度事情を問いたださねばならぬと、惣十郎は腹の中で決める。それともうひとつ、深見に鉄砲の図面について尋ねたところ、意外にも彼は頷いたのだった。

深見の証言と図面の詳細

「口書とともに、図面と部品が回ってきましたので御奉行にはお見せしました。ただ、あの図面で武器と断ずるのは少々無理があるのではないかというのが、私の感想なのですが」と深見は語る。惣十郎がどのような図かと尋ねると、深見は怪訝な面持ちになり、三好に紙を支度させた。懐から矢立を取り出すや、彼はさらさらと図を描いてみせたのだ。

「よく覚えておいでですな」と目を瞠った惣十郎に、深見は淡々と告げた。「大まかな図でございますよ。もともと私はからくりの仕組みを説いた書を読むことを好んでおりまして、茶運び人形なぞも試作したことがございます。それで図面となると、つい興味が勝りまして」

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図面の一致と紛失の疑念

内心、惣十郎は悔やんでいる。とっとと用部屋に訊きにくりゃ話が早かったよ。深見が描き上げた図は、先般、佐吉が梨春から受け取った無尽燈の図面と酷似していた。これと源次郎から上がってくる図面がうまく合致すれば、まことのところが証せるだろう。

「鉄の部品もかなり細いものでしたしね。これでどうやって謀反を起こすのか、と引っ掛かったのです。ただ私どもの役目は吟味をすることではない、御奉行に上げる書類を整えることですから、あまり差し出がましい真似もできず」と深見は続ける。

吟味方の疑問と図面破棄の可能性

しかし、三好が語った通りで、惣十郎もその線が濃いように感じている。誰かしらの指示で、図面が破棄されたとしたら。「吟味方はこの図を武器だと言われて、なぜ疑問を持たなかったのでしょうね。私は、雑物蔵からお粂の図面がなくなっていることも気になりますねぇ。故意という線はございませんか」と三好は問いかける。

深見は即座に三好をたしなめた。「他所のお役目に踏み込んではなりませんよ。御番所でこれからも生きていこうというなら、なおのこと」にこやかに語る深見の目からは、最前までの和やかな温みが消えている。図面紛失の謎は深まるばかりで、惣十郎の調査は新たな局面を迎えようとしていた。

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