惣十郎浮世始末:お粂の正体と河本の手柄追求が焦点に
連載小説「惣十郎浮世始末 巻之二」の第270回が公開された。本編では、お粂が惣十郎の妻ではないことが明らかになり、これまでの経緯に新たな疑問が投げかけられている。
お粂の偽りと河本の動機
深見との会話の中で、惣十郎はお粂が妻ではない事実を確認する。これまでのお粂の行状から、惣十郎の内には怪しむ気持ちが湧いていたが、弓浜宗佑がなぜ偽りを申し立てたのかという疑問が残る。
深見は、河本がお粂を捕らえた際、一人住まいだったため身よりがないと判断した可能性を指摘。もし藩と縁があると知られていたら、お白洲での取り調べも異なる形になったはずだと述べる。
他国の陪臣が江戸で罪を犯した場合、通常はその者が籍を置く藩に問い合わせ、引き渡しや勘定奉行による調査が行われる。しかし、お粂にはこの手続きが取られておらず、武家の妻女に対する扱いとも大きく異なっていた。
囲い者という可能性と謀反の動機
三好が「囲い者ってぇことですか」と問うと、深見は「そう見るのが、妥当かもしれませんねぇ」とのんびりと返答。しかし、三好はお粂が御公儀に謀反を起こす気になった理由について、因果が弱いと指摘する。
これに対し、惣十郎は理由はいくらでも作れると説明。治政への不満や暮らし向きを良くするためといった大まかな動機でも十分であり、河本が手柄となる者を探していたなら、お粂は格好の餌食になった可能性を語る。
河本の手柄主義と吟味方の不可解な対応
三好は、河本が自分の手柄のために、お粂を人身御供にしたのではないかと疑念を抱く。廻方では珍しくない手法として、目を付けた者を適当な理由で捕らえ、拷問を加えて白状させ、己の手柄とすることがあると指摘する。
しかし、惣十郎は河本が廻方を勤めた最後に一花咲かせようと、虚しい手立てに出たとしても、吟味方が容易にこれに乗じたことは、時期が時期とはいえ不可解だと感じている。この点が今後の展開の鍵となりそうだ。



