バラとお坊さんの優しい思い出、母の笑顔がよみがえる
バラとお坊さんの優しい思い出、母の笑顔

バラとお坊さんの思い出

小学生の頃、幼くして亡くなった兄の月命日には、いつもお坊さんにお経をあげていただいていました。お坊さんは朗々とお経を唱えた後、昼食を平らげ、方々で見聞きしたことを面白おかしく話してくれるのでした。失明して笑顔の少なかった母も、この時ばかりは笑い声さえ出して楽しそうでした。

ある時、縁側に置かれたバラに気づいたお坊さんは、「きれいな花が咲きましたね」と母に言った後、心ないことを言ってしまったと思ったのか、気まずそうな様子でした。「どんな花が咲いたのですか」との母の問いにほっとしたお坊さんは、「黄色の大きな花ですよ」と説明を始めましたが、やおら立ち上がると鉢植えのバラを「ヨッコラショ」と母のそばに運んできました。そして母の腕に手を添え、指先をそっと花に触れさせました。

母は「ほんとうに大きな花ですね」と顔を花に近づけ、香りを楽しんでいました。お坊さんはお経をあげるだけでなく、きっと母を楽しませ、喜ばせるためにも来ていたのでしょう。母もお坊さんとの時間が好きだったのだと思います。

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あの時のバラと、母の傍らでほほ笑んでいたお坊さんの姿は、いまなお脳裏に鮮明に焼き付いています。間もなくまたバラが咲き始めることでしょう。そのたびに、あの優しい光景がよみがえります。

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