84歳の筆者が語る村の餅拾い、新年の和やかな祈りと笑いのひととき
84歳の筆者が語る村の餅拾い、新年の祈りと笑い (15.02.2026)

1月12日、年の初めを祝う村祭りが奈良県十津川村で執り行われた。一年の無事を祈願するため、村人たちがいつもより多く集い、社の森に静かな熱気が漂う。神事は滞りなく進み、神主の通る声が木々の間にとけ込んでゆく。最後に、参加者全員が玉串を神前に供え、厳かな儀式は幕を閉じた。

境内に広がる賑わいと餅拾いの楽しみ

神事が終わると、人々は下の境内へと移動する。ここで、お供えされていた餅や菓子、みかんなどを世話役がまき始める、祭りの一番のにぎわいの瞬間が訪れる。筆者は昔、美しい娘に恋した青年が、その娘の餅を拾おうとする必死な姿を見て恋心が冷めたという、笑い転げた記憶を懐かしむ。しかし、現在の餅拾いは、そんな艶っぽい話とは縁遠く、高齢者が大半を占める現実がある。

84歳の筆者が挑む餅拾いの醍醐味

筆者も若い頃はあちらこちらを走り回って餅を拾ったものだが、齢84ともなるとそうはいかない。玉砂利の上に膝をつき、飛んでくる餅や菓子を素早く拾う動作は、体力を要するが、この瞬間がたまらないと語る。今回は、餅13個とお菓子2袋を拾うことに成功し、「上々だよ」とつぶやきながら、そばの人と互いに袋の中をのぞきこんでは笑い合う和やかな光景が広がった。

直会で深まる村人の親睦

餅拾いの後は、直会(なおらい)に入り、お酒やごちそうが振る舞われる。村人たちが集い、親睦を深める大切な時間だ。和やかな会話が交わされ、新年の始まりを共に祝う温かい空気に包まれる。筆者は、こうした伝統行事が地域の絆を強めていると感じる。

帰り際、筆者は社殿に向かってひと言、「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝えた。西壽惠(84)が体験した、奈良県十津川村の餅拾いを通じて、新年の祈りと笑いが交錯する村の姿が鮮明に浮かび上がる。高齢化が進む中でも、伝統を守り続ける人々の営みが、静かな感動を呼び起こすエッセーとなっている。