歌人・大口玲子さん、第8歌集「スルスムコルダ」刊行 息子の旅立ちや震災を短歌で綴る
大口玲子さん第8歌集「スルスムコルダ」刊行 (04.03.2026)

歌人・大口玲子さん、第8歌集「スルスムコルダ」を刊行

宮崎市在住の歌人、大口玲子さん(56)の第8歌集「スルスムコルダ」が、ふらんす堂から刊行されました。この歌集は、2024年の1年366日を、1日ごとに1首の短歌と短文で綴ったもので、同年に同出版社のウェブサイトで連載された「短歌日記」を一冊にまとめたものです。

タイトルの意味と制作背景

タイトルの「スルスムコルダ」は、ラテン語で「心を高く上げよ」という意味です。クリスチャンである大口さんがミサなどで唱える文言で、気持ちが落ち込んだ時も上を向いていこうとの思いを込めています。大口さんは「基本的に1日1首作っており、日記のような歌集になった」と語っています。

息子の旅立ちを詠んだ短歌

2024年、大口さんにとって最も大きな出来事は、一人息子が宮崎を出て長崎の高校に進学したことでした。受験や旅立ちの日の心境を、以下のような短歌で表現しています。

  • 〈霜踏んでひとり行くらむ それぞれの冬野があれば子に付き添はず〉(1月23日)
  • 〈そして今朝青いギターを肩にかけて息子はこの家を出ていつた〉(4月2日)

震災や社会問題への視点

一方、東日本大震災を機に、まだ幼かった息子を連れて仙台市から宮崎市に移住した大口さんは、震災や原発事故などを歌にしてきました。歌集には、〈隣県に稼働してゐる原子力発電所あり海かすみたり〉(3月11日)といった作品も収録されています。後書きでは、「信仰や政治について表だって話題にすることは青臭く無粋でつまらないことだとする社会の空気に抵抗したい思いもある」と意図を記しています。

短歌講座でのアドバイス

大口さんは、NHK宮崎放送局の「わけもん短歌」のコーナーに出演するなど、解説を通じて短歌の魅力を広めています。1月18日に宮崎県立図書館で開かれた短歌講座では、子どもから大人まで約50人が参加。作者を当てるクイズなどを通じて短歌の基本を学んだ後、実際に短歌を作りました。大口さんは短歌を作るポイントとして、「自分の思いや感想は直接書かず、状況を詳しく描写すること」とアドバイスを送っていました。

この歌集は、個人の日常から社会問題まで幅広く捉え、短歌の表現力を示す作品として注目されています。大口さんの活動は、地域文化の振興にも貢献しており、今後も宮崎を中心に短歌の普及が期待されます。