ピアノ歴40年の我流演奏、夫の耳栓から拡大楽譜への変遷
私はピアノを弾き始めて40年になる。こう言うと、さぞかし上手な演奏ができるだろうと想像されるかもしれないが、実際はその逆だ。長年にわたって我流で練習を続けてきたため、一向に上達しないのが現実である。
夫の定年退職とピアノ練習の葛藤
夫が単身赴任中は、この状況でも特に問題はなかった。自由に練習でき、誰にも気兼ねする必要がなかったからだ。しかし、夫が定年退職し、毎日家にいるようになってからは事情が一変した。
当初は遠慮して、下手な演奏を聴かせるのは忍びないと考え、夫の外出中にだけピアノを弾いていた。だが、次第に我慢できなくなり、ついに練習を再開することを宣言した。すると、夫はさっさと別室に移動し、耳栓までするようになった。私の音色が、彼にとっては雑音に聞こえるほどだったのだ。
老眼の進行と夫の思いがけないサポート
近年、老眼が進み、楽譜の細かい音符が見えにくくなってきた。この悩みを夫に伝えると、ある日、彼が楽譜を拡大コピーしてくれた。パラパラとめくりながら弾いていると、翌日には黙ってテープでまとめてくれていた。これにより、一読しやすくなり、演奏が随分と楽になった。
このサポートをきっかけに、猛練習を重ねた結果、ついにノーミスで曲を弾けるようになった。喜びを分かち合おうと、遠方に住む子供たちに動画を送ったところ、「すごく上手」などと賛辞が返ってきた。実は、あの子たちの方がずっと上級者なのに、である。
子供の頃の夢と今の幸せ
私は子供の頃、ピアノを習う機会に恵まれなかった。しかし今、家族に支えられ、大好きなピアノを弾けることに、心から感謝している。夫の耳栓から始まった小さな変化が、拡大楽譜を通じて深い絆を生み出した。
この経験を通じて、家族の優しさや理解が、どれほど大きな力になるかを実感した。ピアノ歴40年、我流の道のりは続くが、今は幸せな気持ちで毎日を過ごしている。



