惣十郎浮世始末 巻之二 第294回:志村と惣十郎の対決、真実を追う
惣十郎浮世始末 巻之二 第294回 志村と対決

惣十郎、志村に迫る

惣十郎の言葉に志村は目を見開き、「さよう」と頼りない声を漏らした。惣十郎はさらに追い打ちをかける。「口書を作成したのは、現在も例繰り方にいるご子息で間違いありませんね」。志村は答えないが、惣十郎の意図を察したようだ。

「河本様がお粂捕縛の際に入手した証拠品のうち、見当たらないものがあります。お粂が描いた完成図です。それがあれば、事件をより容易に解明できたはず。口書には確かに記載があり、用部屋の同心も確認したと言うのに、現物が存在しません」

志村は大きく息を吐き、「用部屋にまで聞いたのか」とつぶやいた。「雑物蔵に預けた品については私も気づかなかったが、お前の言い方だと、単なる紛失ではないようだな」

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「はっきりとは申せませんが、一件の吟味には、捕物と同様に不可解な力が働いていたように感じます。その点を明らかにしたいと考えています」

「お前には見当がついているのか」志村の目つきは険しい。彼も会話の内容から全てを察したに違いない。

「もしその経緯が明らかになり、お粂の罪が晴れたなら、彼女を獄から解放していただけないでしょうか」

「それはお奉行に伺いを立てねばならぬが……」

「ありがとうございます」惣十郎は志村が承諾する前に、素早く頭を下げた。事件の全てを明らかにすれば、廻方のみならず吟味方も傷を負うだろう。彼らの吟味が不十分だったことを証明することになるからだ。

志村は腕を組んで考え込む。崎岡が「おい、調子に乗るなよ」と再び袖を引く。惣十郎は続ける。「無辜の者を己の出世のために使い、意地を通すため、御番所で認められるために利用する。そういう者が事実をねじ曲げ、真実を闇に葬る。人が大義を掲げて無実の他者を陥れるほど醜いことはありません」

志村は観念したように、「承知した」とくぐもった声で応えた。

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