スモーキングルーム第164回:嵐の夜の密談と突然の騒動
ホテルの一室で、金ボタンは総支配人をじっと見つめていた。総支配人は静かに目を閉じると、鳥の巣の手を両手でしっかりと握りしめた。その瞬間、鳥の巣の肩の強張りがほのかに緩むのが感じられた。
「これは君が持っておきなさい。できる限りの努力をすると誓おう。こんな世界は間違っている」と総支配人は語りかける。金ボタンはほっとした表情で「鳥の巣、お前はここに残れ」と提案したが、鳥の巣は首を振って拒否した。
戻る決意と偽装工作の提案
「僕は戻る。まだ、やることがあるから」と鳥の巣は言い切った。それに対し、総支配人は「明日の朝、嵐がおさまったらわたしが送っていこう。わたしの車が君を轢きかけたことにしておけば咎められないだろう」と提案する。巧妙な偽装工作で安全を確保しようというのだ。
鳥の巣は不安そうな顔を浮かべながら、すっかり冷めてしまったスープを手元に引き寄せた。「あちこちに密偵がいる。くれぐれも気をつけて」と小声で呟く。金ボタンは「今夜は俺の部屋に泊まれよ!雨の晩は襟巻きもいるぜ」と誘うが、鳥の巣は「あの暴力鴉か、嫌だなあ」とほんの少しだけ笑みを漏らした。
突然のベルとフロントの騒動
その瞬間、休憩室の壁に取りつけてあるベルのひとつが澄んだ音で鳴り響いた。「ほれほれ、きたきた」と金ボタンは長椅子から立ち上がり、制服の裾を軽く払った。フロントでは将校が怒鳴り声を上げていた。
白眼を赤く濁らせ、酒臭い息を吐きながら、「あのJはどこにいる!」と叫ぶ将校の姿があった。金ボタンは一瞬、鳥の巣のことを指しているのかと冷や汗をかいたが、何食わぬ顔で近づいていく。フロント係たちは青ざめ、恐怖に震えていた。
将校の執拗な追及
将校は上着を脱ぎ、襟元の乱れたシャツ姿になっていたが、腰ベルトにはまだ拳銃が下げられていた。危険を感じながらも、金ボタンは「いかが致しました?」と声をかける。
「あのJがまだいるだろう!」将校の声はさらに荒れていた。「どちら様のことでしょうか」と金ボタンが尋ねると、将校は呂律の回らない口で「あの、丸眼鏡のJだ!総支配人の!あいつが見ていた!」と喚き立てた。さすがの金ボタンも困惑の色を隠せず、表情が硬くなった。
嵐の夜のホテルでは、密談と偽装工作の計画が進む中、突然の将校の登場によって緊張が一気に高まっていた。密偵の存在が仄めかされるこの世界で、鳥の巣と金ボタンの運命はどうなるのか。次回への期待が膨らむ展開となっている。



