宮崎の歌人・大口玲子さん、1日1首の「短歌日記」を歌集に 息子の旅立ちや信仰を詠む
大口玲子さん、1日1首の短歌日記を歌集に 息子の旅立ち詠む (03.03.2026)

宮崎の歌人・大口玲子さん、日記のような第8歌集を刊行

宮崎市在住の歌人、大口玲子さん(56)の第8歌集「スルスムコルダ」(ふらんす堂)がこのほど刊行された。この作品は、2024年の1年366日を1日ごとに1首の短歌と短文で綴った独特の形式を取っており、日記のような歌集として注目を集めている。

「心を高く上げよ」というラテン語がタイトルの意味

タイトルの「スルスムコルダ」は、ラテン語で「心を高く上げよ」という意味を持つ。クリスチャンである大口さんがミサなどで唱える文言で、「気持ちが落ち込んだ時も上を向いていこうとの思いを込めた」と語る。基本的に1日1首を作り続けた結果、「日記のような歌集になった」という。

この歌集は、同年にふらんす堂のウェブサイト上で「短歌日記」として連載されたものを一冊にまとめたもので、日常生活の細やかな観察と深い内省が特徴だ。

息子の旅立ちを詠んだ作品も収録

2024年、大口さんにとって最も大きな出来事は、一人息子が宮崎を出て長崎の高校に進学したことだった。受験や旅立ちの日の心境を詠んだ作品も収められており、親子の別れと成長を静かに描いている。

〈霜踏んでひとり行くらむ それぞれの冬野があれば子に付き添はず〉(1月23日)

〈そして今朝青いギターを肩にかけて息子はこの家を出ていつた〉(4月2日)

これらの短歌には、子どもの自立に対する複雑な感情と、静かな見守りがにじみ出ている。

東日本大震災からの移住と社会へのまなざし

一方で、東日本大震災を機に幼かった息子を連れて仙台市から宮崎市に移住した経験を持つ大口さんらしく、震災や原発事故への思いも作品に反映されている。

〈隣県に稼働してゐる原子力発電所あり海かすみたり〉(3月11日)

後書きでは、「信仰や政治について表だって話題にすることは青臭く無粋でつまらないことだとする社会の空気に抵抗したい思いもある」と記しており、作品を通じた静かな主張が感じられる。

短歌講座で魅力を伝える活動も

大口さんは、NHK宮崎放送局の「わけもん短歌」コーナーに出演するなど、短歌の魅力を広める活動にも力を入れている。今年1月18日には県立図書館で短歌講座を開催し、子どもから大人まで約50人が参加した。

講座では、作者を当てるクイズなどを通じて短歌の基本を学んだ後、実際に短歌を作成。大口さんは参加者に「自分の思いや感想は直接書かず、状況を詳しく描写すること」とアドバイスを送り、短歌創作のポイントを伝授した。

このように、大口玲子さんは作品創作だけでなく、教育活動を通じて短歌文化の継承にも貢献している。日記形式の歌集「スルスムコルダ」は、個人の内面と社会を結びつける現代短歌の可能性を示す一冊となっている。